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県土を支える4本の高規格幹線道路とネットワーク効果

★自然災害大国の日本だからこそ、道路整備にあたっては、途切れることのないネットワークを形成し、リダンダンシーを確保することが求められます。


高規格幹線道路は、豊かで活力ある地域社会の形成及び広域的な連携を支えるうえで必要不可欠な基盤施設です。

 茨城県内には常磐自動車道(常磐道)、北関東自動車道(北関東道)、東関東自動車道水戸線(東関道水戸線)、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の4本の高規格幹線道路があります。


県土を南北に縦貫する「常磐自動車道」

 常磐自動車道(常磐道)は、東京都練馬区を起点として埼玉、千葉、茨城、福島を通過し、宮城県仙台市に至る総延長350キロメートルの高規格幹線道路です。首都圏と東関東及び南東北の太平洋沿岸地域の交流拡大や、産業・経済・文化の発展など重要な役割を果たします。

 茨城県内においては、1981年(昭和56年)4月の千葉県境から谷田部IC間の開通を皮切りとして、1988年(昭和63年)3月までに全区間が開通しています。


 常磐自動車道(茨城県)↓


県土中央部を東西に横断する「北関東自動車道」

 北関東自動車道(北関東道)は、群馬県高崎市を起点とし、栃木県を経て茨城県ひたちなか市に至る総延長約150キロメートルの高規格幹線道路です。茨城港(常陸那珂港区)と直結して東京湾内諸港の機能分担と首都圏物流の円滑化を図ることにより、北関東地域の振興、発展に極めて重要な役割を果たします。

 茨城県内においては、1996年(平成8年)12月の水戸南IC ~水戸大洗IC間の開通を皮切りとして、2008年(平成20年)12月までに全区間が開通し、友部JCTを経由して常磐自動車道と接続しています。


 北関東自動車道(茨城県)↓


県土南東部を南北に走る「東関東自動車道水戸線」

 東関東自動車道水戸線(東関道水戸線)は、東京都を起点とし、千葉県を経て茨城県に至る延長約140キロメートルの高規格幹線道路です。北関東自動車道や首都圏中央連絡自動車道と一体となって、鹿島港や茨城港、成田空港、茨城空港などの交流拠点を結び、陸・海・空の広域交通ネットワークを形成する幹線道路です。

 茨城県内においては、県内区間約51kmのうち、これまでに千葉県境~潮来IC間(約2km)及び鉾田IC~茨城町JCT間(約18km)が開通しており、現在は、残る区間(潮来IC~鉾田IC間;約31km)について、2025~26年度(令和7~8年度)の開通を目指し事業が進められています。


 東関東自動車道水戸線(茨城県)↓


首都圏3環状道路の一番外側に位置し、県土南部を東西に走る「首都圏中央連絡自動車道」

 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)は、都心から半径40キロメートル~60キロメートルの位置に計画された総延長約300キロメートルの環状の高規格幹線道路です。本道路は、首都圏3環状道路の一番外側に位置する環状道路であり、横浜、厚木、八王子、川越、つくば、成田、木更津等の中核都市を連絡するとともに、放射状の高規格幹線道路を相互に結ぶことによって、首都圏の広域的な幹線道路網を形成し、首都機能の再編成や産業活力の向上等に重要な役割を果たします。

 茨城県内においては、2003年(平成15年)3月のつくばJCT~つくば牛久IC間(約2km)の開通を皮切りとして、2017年(平成29年)2月までに全区間が暫定2車線で開通しており、これまでに産業面(企業立地)や観光面(入込客増)で大きなストック効果をあげています。

 さらに現在は、全区間において4車線化の事業が進められているところであり、事業完成によって、定時性の確保、安全性・走行性の確保、速達性の確保、緊急時の輸送路の確保といった効果が期待されます。


 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)(茨城県)↓


 圏央道ストック効果と4車線化の必要性について(茨城県)↓


 圏央道(首都圏中央連絡自動車道)(国土交通省関東地方整備局)↓


高規格幹線道路の整備状況(茨城県HPより)


茨城県内高規格幹線道路


環状道路の意味を考える

 圏央道(環状道路)が整備されていなかった時代、例えば茨城県つくば市から東京都八王子市に移動するのには、一旦都心に出ないと行くことが出来ず、したがって都心は常に渋滞していました。これを解消するためにこそ、圏央道(環状道路)の整備が求められたのですが、その効用を沿線住民の多くは理解できませんでした。とにかく都心まで早く行ける道路の方を優先して求めてしまうのです。

 放射状に伸びた6本の道路を、環状道路の輪でつなぐと、ある地点から別のある地点に行くのに、17通りものルートが確保できます。万が一、事故などで道が封鎖されても、いくつものルートで目的地への移動が可能となるのです。これに対して、環状道路の一部(1リンク)を外しただけで、11ものルートが通行できなくなってしまいます。道路のネットワークが繋がることで、地点間の連絡性が格段に向上するのです。


環状道路の意味


ネットワークとしての道路の評価(リダンダンシーを考慮する)

 ドイツでは、最短路線が切れても他の路線で繋がっていること(=代替路線があること)が道路ネットワーク形成の基本的な考え方になっています。その背景には、空襲があっても、主要な都市間は代替路線でつながっていなければならない、という過去の経験値に基づく確固たる認識があるからです。

 一方、日本は大災害頻発国であるのに、災害による国土分断の可能性(リスク)を重要視してきませんでした。これまで、道路整備(事業着手)の評価基準は、経済的価値(B/C)を最優先にしてきたため、ネットワークの代替性や補完性といったリダンダンシー(冗長性)はほとんど考慮してこなかったのです。このため、1995年(平成7年)の阪神淡路大震災時には、鉄道と道路のすべての幹線が被災し、日本の東西がかなりの間、完全に分断されてしまうという事態に陥りました。

 これに対して、2011年(平成23年)の東日本大震災では、海岸線に沿って南北に走る一般国道45号は津波によって大きく被災しましたが、海岸から離れた丘陵部にトンネルや橋梁を多用して建設されていた三陸縦貫自動車道(通称:三陸沿岸道路)は、ほとんど津波の被害を受けませんでした(ただし、大震災前は対象路線のうち約3割しか開通していませんでした)。

 その後、三陸縦貫自動車道の整備は、東日本大震災からの早期復興に向けたリーディングプロジェクト「復興道路」として位置付けられ、2011年11月に国会で予算が成立、全線事業化されました。沿岸南北軸を高規格道路で結び、早期復興をはじめ、防災ネットワークの形成、地域活性化などに寄与する道路として急ピッチで工事が進められてきましたが、2021年(令和3年)12月、普代~久慈間(延長25km、全区間岩手県内)が開通し、これにより全線359kmの高規格幹線道路ネットワークが完成しました。

 また、「復興支援道路」として三陸沿岸道路と同時に事業化され、一体的に整備が進められてきた「宮古盛岡横断道路」「東北横断自動車道・釜石秋田線(釜石~花巻)」「東北中央自動車道(相馬~福島)」と合わせて、延長約550kmの高規格幹線道路ネットワークが完成することになったのです。


 自然災害大国の日本であるからこそ、道路整備にあたっては、途切れることのないネットワークを形成し、リダンダンシーを確保することが求められます。まさに、追及すべき重要な価値であると思います。


 復興道路・復興支援道路(国土交通省東北地方整備局)↓


 3.11 復興道路・復興支援道路情報サイト(国土交通省東北地方整備局)↓


(今回の舞台)



(2022年3月27日)

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