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白川を治める、その難しさ

★流域面積の80%が上流域の阿蘇カルデラ=全国平均の2倍にもなる多雨地帯、洪水を引き起こしやすい河川勾配、県都・熊本市街地を天井川が貫通する。こうした特徴を持つ白川は、過去に何度も大きな洪水を引き起こしてきた。  熊本県(肥後国)の地域は、九州山脈及び阿蘇外輪山を水源とする河川ごとに特徴がある。山川出版社発行の『熊本県の歴史』(新版県史シリーズ第43巻)によれば、現在の熊本県の地域は、①阿蘇カルデラを含む白川流域、②南外輪山に源流を発する緑川流域、③西外輪山に源流を発する菊池川流域、④人吉盆地を主軸にした球磨川流域、⑤山地が海岸にまで迫っている芦北地方、⑥八代海をへだてた天草諸島に区分される。  白川流域については、「阿蘇谷の黒川、南郷谷の白川は合流して白川となり、立野火口瀬から西へ流れ熊本平野にそそぐ。この高原地帯は中世までは阿蘇山を御神体とする肥後一宮阿蘇社の所領であり、近代においては観光客を集め、牧畜・酪農地帯を形成し、高原野菜の産地として脚光をあびている」とある。

 白川は、阿蘇山の根子岳に源を発し、阿蘇山カルデラの南部「南郷谷」を西流。立野(南阿蘇村)で、カルデラの北側「阿蘇谷」を流れる支流の黒川と合流する。その後は、急流となって田畑の広がる中流部を流下、下流部では熊本市の密集市街地の中心を貫流し、軟弱な低平地に広がる穀倉地帯を経て有明海に注ぐ。

【白川の特徴/治めることが極めて難しい】  熊本河川国道事務所(国土交通省)のホームページによると、白川は以下の4つの特徴を持つ一級河川で、治めることが極めて難しい河川である。 https://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/tokusei.html -「ジョウロ型」の流域:流域面積の80%が上流域の阿蘇カルデラ-  上流域にある阿蘇カルデラが白川の流域面積の約80%占めており、ジョウロ型の流域は、阿蘇に降った雨を一手に引き受け、九州第三の都市熊本市へ流し込む。

-白川上流は全国平均の2倍にもなる多雨地帯-  上流の阿蘇地方は全国的にも有数の多雨地帯。阿蘇地方の年間降雨量(約3,200mm)は下流・熊本市(約2,000mm)の1.6倍で、全国の年間降雨量の平均(1,560mm)の2倍にもなる。

-洪水を引き起こしやすい河川勾配-  阿蘇カルデラに降った雨は、立野火口瀬から一気に流下するが(白川中流部は急流で水の流れが速いが)、熊本市街部が広がる下流部や低平地の広がる河口部は緩やかな地形となっているため、水が流れにくくなる(=洪水を引き起こしやすい)。 -県都・熊本市街地を天井川が貫通する-  白川は、熊本市街部の周辺地盤よりも高いところを流れる「天井川」であるため、一度氾濫すると甚大な浸水被害が発生してしまう。さらに、阿蘇山が”ヨナ”と呼ばれる火山灰を多量に降らしているため、洪水時には一気に流下して被害を拡大する。

【白川の過去の水害】  こうした特徴を持つため、白川は過去に何度も大きな洪水を引き起こしてきた。戦後の代表的な洪水は次の通りである。 https://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/suigai/index.html

-昭和28年・白川大水害(6.26水害)-  昭和28年6月末、停滞していた梅雨前線に高温多湿の気流が流れ込み、熊本地方は未曾有の豪雨となった。阿蘇地方にそれまで降り続いた雨で地盤は高い湿潤状態であったところに、この大雨が降ったため、白川はまたたくまに増水して大洪水となって沿川一帯に大きな被害を与えた。  この6・26災害での被害は、死者行方不明者422人、家屋浸水31,145戸、橋梁流出85橋(うち熊本市内の白川本川、白川にかかる橋14橋)となっている。

-平成24年・九州北部豪雨-  7月11日から14日にかけて、本州付近に停滞した梅雨前線に向かって南から非常に湿った空気が流れ込み、九州北部を中心に非常に強い大雨となった。白川流域では坊中雨量観測所で観測史上第1位となる時間雨量124mmを記録した。  また、河川水位についても、基準地点代継橋において昭和31年の観測開始以来、観測史上第1位となる水位を観測。この大雨により、白川が熊本市街部で越水し、支川黒川も広範囲に氾濫することとなり、沿川で多数の家屋浸水を発生させた。  この大雨による被害は、死者行方不明者25人、家屋の全半壊183戸、床上浸水2,011戸、床下浸水789戸であった。

【白川の河川整備】 現在、白川の河川整備は、昭和28年・白川大水害の洪水規模(150年に1回発生する確率規模の洪水)に対応することを目標として(白川水系河川整備基本方針による)、当面は、20〜30年に1回発生する確率規模の洪水に対応すべく(白川水系河川整備計画による)進められている。 https://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/shirakawa_kasenseibi/index.html

 この治めるに難しい「白川」の本格的治水工事に最初に取り組んだ(と言われている)のが、肥後熊本藩初代藩主・加藤清正である。

(2016年「出初め式」in白川)

(白川中流)

(白川下流:子飼橋付近)

(白川下流:緑の区間)

(白川橋)

(今回の舞台)

(2016年10月22日)

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