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白川を治める(加藤清正公の川づくり①)

★国づくり川づくりに卓越した見識と実績を残した加藤清正は、現在も「土木の神様」「せいしょこさん」と呼ばれ、民衆から慕われている。

前回に引き続き「白川を治める」をテーマに、今回は、この治めるに難しい「白川」の本格的治水工事に最初に取り組んだ(と言われている)肥後熊本藩初代藩主・加藤清正公(せいしょこさん)の物語を紹介する。  熊本河川国道事務所(国土交通省)のホームページによると、1588年(天正16年)に加藤清正が肥後北半国の領主として入国するまで、肥後は長らく多数の国衆が群雄割拠した状態でまとまりが無く、大規模な国造りがなされていなかった。従って、白川、緑川、菊池川といった大河川の整備も手つかずの状況で、大雨による河川の氾濫が頻発し領民は苦しんでいた。

【熊本城築城に伴う白川、坪井川の改修】  1588年(天正16年)、肥後に入国した清正は、隈本城(古城)のあった茶臼山南麓(現在の熊本第一高校付近)から東方へ城の中心を移し、茶臼山一帯を城塞化するとともに、城下町の整備拡張のため白川・坪井川の流路改修を計画する。  当時の白川は、現在の代継橋から長六橋にかけて大きく北側へ蛇行し、そこへ東から坪井川が合流していた。また、熊本城の西側を流れる井芹川は、二本木(現在の熊本駅南側)付近で白川に合流しており、流路が入り乱れて、氾濫が起きやすい状況であった。  そこで清正は、現在の代継橋から長六橋にかけての蛇行部分の河道を締め切り、蛇行の始点から終点を掘り切って繋げ、流路を直線化することで、白川右岸に新たな土地を広げつつ、城の外堀としての防御機能を持たせた。 また、白川と切り離された坪井川は、城の内堀として茶臼山の裾を西へ流下させ、下流で井芹川へ合流させた。  その井芹川は下流の二本木付近で白川と合流していたものを石塘(背割堤)を築いて分離させ、新たな坪井川として河口の高橋(現在の百貫港)まで一本の川に繋げた。  井芹川との合流で水勢を増した新しい坪井川は、白川からの分離により阿蘇山からの火山灰土が流下堆積しなくなったことで水深が確保され、城下町の舟運路として大正時代まで重要な役割を果たした。  清正はこのように、まず川を治めながら川のもつ恵みや機能を巧みに利用することで城下の整備を成し遂げ、現在にまで至る熊本城下の発展の礎を築いた。 http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/rekishi/rekishi_01.html

【瀬田堰、馬場楠堰、渡鹿堰等の建設による治水と利水(灌漑)】  清正は、治水事業のほか、領内の田畑を開発するために不可欠となる利水事業を進めた。具体的には、平常時に水量が少なく、特に中流域は土壌が火山灰土からなるため、水の地下浸透量が大きいという白川流域の特性を理解した上で、清正は、洪水時には流れを緩め、平常時は水を蓄えて取水するための施設として、河川の両岸に渡る堰の建設を進めた。  瀬田堰(大津町瀬田)、馬場楠堰(菊陽町馬場楠)、渡鹿堰(熊本市)など、清正が築いた取水堰は大小合わせて29箇所にのぼり、田畑まで送水するための井出(用水路)をあわせて整備することで、沿川の田畑は白川の水で潤い、かんがい面積は約3,500町に及んだ。 http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/rekishi/rekkishi_02.html

【鼻ぐり井手:卓越した技術と創意工夫】  馬場楠堰(菊陽町馬場楠)から連なる井手に、清正が施したのが「鼻ぐり」と呼ばれる溝穴。この堰から下流2kmの導水ルート上に岩山が存在したためトンネル状の導水路を通すことにしたものの、そのままでは堀抜いた井手にヨナ(火山灰土)が堆積し導水がままならない。そこで清正は、導水路を堀抜くにあたり適当な間隔(2~3mおき)で流れを遮る壁を残し、水を通す穴を壁の底に左右交互に設けた。こうすることで、壁穴を抜けた水が次の壁にあたる際に内部で渦巻き、ヨナも常に攪拌されて水とともに次の穴へ押し流されていくという当時としては画期的な工法で、これにより95町余が水田化されたといい、今なおその一部は現役の機能を果たしている。 http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/rekishi/rekishi_03.html

国づくり川づくりに卓越した見識と実績を残した加藤清正は、現在も「土木の神様」「せいしょこさん」と呼ばれ、民衆から慕われている。

(鼻ぐり井手)

(現在の瀬田堰)

(瀬田堰から取水して流れる下井手)

(現在の馬場楠堰)

(現在の渡鹿堰)

(渡鹿堰から取水して流れる大井手)

(熊本城の内堀となった坪井川)

白川の現在の治水・利水施設はこちら↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/river/shirakawa/rekishi/rekishi_05.html

(今回の舞台)

(2016年10月22日)

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