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2016年を振り返る。自然災害に翻弄された熊本(肥後)の一年。

【1月23~25日:約40年ぶりの大寒波・大雪】【4月14・16日:最大震度7を2回観測した熊本地震】【6月19~22日:梅雨前線による記録的大雨。甲佐町で全国歴代ランキング4位の150.0mm/hを観測】【10月8日:36年ぶりに阿蘇山中岳が爆発的噴火】

 12月12日、京都・清水寺で恒例の「今年の漢字」が発表された(はがきやウェブからの公募で決まる企画)。2016年の「今年の漢字」は「金」。選定理由は、リオ五輪の「金」メダルラッシュや、イチロー選手の大記録の「金」字塔に加え、PPAPのピコ太郎さんの「金」色の衣装などであったとのこと。  一方、私にとっての2016年の「今年の漢字」は「震」であった。  世界を見れば、6月の英国国民投票でイギリスのEU離脱(いわゆるブレグジット)が決まり、11月の米国大統領選においてトランプ大統領が誕生することとなるなど、自由、法の支配、民主主義といった普遍的価値を重要視してきた英米のデモクラシー(寛容な民主主義)が機能不全に陥っていることを印象づけた。全世界に激震が走った。  そして国内に目を転じると、2016年は大規模な自然災害ラッシュ。特に、私が生活し、働いている熊本では、1月の【約40年ぶりの大寒波・大雪】に始まり、4月の【最大震度7を2回観測した熊本地震】、6月の【梅雨前線による記録的大雨。甲佐町で全国歴代ランキング4位の150.0mm/hを観測】、そして10月の【36年ぶりに阿蘇山中岳が爆発的噴火】と、立て続けに大規模な自然災害に見舞われた1年であった。とりわけ、熊本地震のインパクトは半端無く大きかった。自然の驚異を改めて思い知らされたとともに、防災・減災対策がいかに重要かを痛感させられた。

今年の熊本(肥後)は、自然災害に翻弄された1年であった。熊本地方気象台や九州地方整備局等の資料に基づき、熊本(肥後)の2106年を振り返る。

【1月23~25日:約40年ぶりの大寒波・大雪】  1月23日から25日にかけて強い冬型の気圧配置となり、九州北部地方の約1500メートル上空には氷点下15度以下の寒気が流れ込んだ。  熊本県では、23日夜から県内各地で断続的に雪が降り、24日09時には人吉と水俣で5cm、牛深で3cm、24日13時には熊本市京町で4cmの積雪が観測された。その後、天草・芦北地方や球磨地方を中心に断続的に雪が降り、25日09時には人吉と水俣で20cm、牛深で12cmの積雪が観測された。  また、25日の最低気温は、上(あさぎり町)で氷点下13.8度、人吉(人吉市)で氷点下9.8度を観測したのをはじめ、県内9地点の観測所で観測史上1位の値を更新した。  この大雪や低温の影響で高速道路などが通行止めになり、交通機関の運休・遅延などの交通障害や車のスリップ事故が発生し、熊本県警察本部調べでは、24日08時30分から25日08時30分で人身事故25件、けが人33人、物損事故107件が発生した。また、水道管の凍結による断水も多数発生した。(以上、熊本地方気象台資料から)

平成28年1月24日から25日にかけての熊本県の大雪と低温について(熊本地方気象台)↓ http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/kakusyusiryou/20160126_kumamoto.pdf

(国道3号・県南地域 除雪状況)

(国道57号・阿蘇地域 除雪状況)

【4月14・16日:最大震度7を2回観測した熊本地震】  平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震央とするマグニチュード(Mj)6.5の地震が発生(前震)、さらに、その28時間後の4月16日1時25分にはMj7.3の地震が発生し、益城町と西原村で震度7を観測した(本震)。延べ4,000回を超える余震による影響を含め、「熊本地震」は熊本~阿蘇周辺地域に甚大な被害を与えた。多数の家屋倒壊や土砂災害による人的被害、電気・ガス・水道等のライフラインへの被害のほか、空港・道路・鉄道等の交通インフラにも甚大な被害が生じ、県民生活や中小企業、農林漁業や観光業等の経済活動にも大きな支障が生じた。  これに対し、政府は、4月14日22時10分、災害対策基本法第24条第1項の規定に基づき、「平成28年(2016年)熊本県熊本地方を震源とする地震非常災害対策本部」を設置。翌4月15日10時40分には熊本県庁内に現地対策本部(内閣府、総務省、農林水産省、文部科学省、経済産業省、厚生労働省、国土交通省、中小企業庁、環境省、林野庁、警察庁、消防庁、防衛省、気象庁、国土地理院で構成。最大110名体制)を立ち上げ、熊本県災害対策本部と連携して、①人命救助・捜索部隊の活動調整、②物資供給の調整、③電気・水道・ガス等ライフラインの迅速な復旧、④避難所支援(県・市町村とNPO団体との調整)、⑤健康管理支援、⑥災害廃棄処理、⑦市町村の行政機能の回復支援にあたった。  熊本地震では、県内交通の南北方向の大動脈である九州自動車道が甚大な被害を受け、被災後2週間にわたり全面通行止めとなったため、これと並行する直轄国道(3号、57号バイパス等)の応急復旧・交通開放が迅速に行われた(本震後24時間以内に通行可能となっている)。  また、東西方向の生命線ともいうべき国道57号が南阿蘇村立野地点で斜面崩壊により寸断、これと接続する国道325号阿蘇大橋も崩落、さらに県道熊本高森線の俵山トンネルとそれにつながる橋梁群も損傷し、2~3万台/日を超える熊本~阿蘇間の重交通が機能麻痺の状態となったため、広域の迂回路(ミルクロード、グリーンロードなど)の啓開も並行して進められた(ゴールデン・ウイーク前に応急復旧・交通解放されている)。  一方、熊本地震では一級河川・緑川及び白川の河川堤防の損傷も激しく、このうち堤体の変状が大きかった緑川水系緑川・加勢川の11箇所については、24時間体制で緊急的な復旧工事が実施された(本格的な出水期に入る前に全ての工事が完了している)。  そして現在は、国道57号の本復旧(直轄砂防事業、北側復旧ルートを含む)、阿蘇大橋の架け替え、俵山ルートの本復旧、一級河川緑川・白川の本復旧工事などが全力で進められている。

 熊本地震の復旧・復興(九州地方整備局)↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/site_files/file/bousai_joho/tecforce/pdf/katsudou2901.pdf

(国道57号・阿蘇大橋地区 被災状況)

(一級河川・緑川堤防 被災状況)

(阿蘇大橋地区にて)

【6月19~22日:梅雨前線による記録的大雨。甲佐町で全国歴代ランキング4位の150.0mm/hを観測】  6月18日に九州南岸にあった梅雨前線が、19日にかけて九州北部まで北上し、梅雨前線の南側にあたる地域では、東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込んだ。このため、大気の状態が非常に不安定となり、発達した積乱雲が次々と流れ込み大雨となった。20日は、東シナ海から接近した梅雨前線上の低気圧が20日夜にかけて九州北部を通過した。このため、前線活動が活発となり、21日朝にかけて大雨となった。22日は、梅雨前線上に発生した低気圧が九州北部を通過したため、前線活動が活発となり、22日夜を中心に大雨となった。  6月18日18時から23日09時までの総雨量は、阿蘇山(阿蘇郡南阿蘇村)で622.0mm、南小国(阿蘇郡南小国町)で510.0mm、阿蘇乙姫(阿蘇市)で501.5mm、山江(球磨郡山江村)で470.5mm、五木(球磨郡五木村)で470.0mm、鹿北(山鹿市)で453.5mm、南阿蘇(阿蘇郡南阿蘇村)で453.5mm、山都(上益城郡山都町)で452.0mm、菊池(菊池市)で428.0mm、湯前横谷(球磨郡湯前町)で421.5mm、一勝地(球磨郡球磨村)で401.5mmを観測した。(以上、熊本地方気象台資料から)  6月21日、上益城郡甲佐町では観測史上1位となる最大1時間降水量150.0mmを観測、これは気象庁全国歴代ランキングでも4位の記録となった。  なお、この梅雨前線による6月6日~7月15日までの豪雨災害(全国)は激甚災害として指定されたところであるが、熊本県の上益城・下益城郡(美里町、御船町、甲佐町、山都町)等では、熊本地震で地盤が緩んだ上に、激しい降雨が追い打ちをかけ、土砂災害による被害規模が甚大なものとなった。

平成28年6月19日から23日にかけての熊本県の大雨について(熊本地方気象台)↓ http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/kakusyusiryou/H28.0619-23_saigaijikishosiryo.pdf

(国道57号・阿蘇口地区 被災状況)

(一級河川・白川明午橋 出水と流木の状況)

【10月8日:36年ぶりに阿蘇山中岳が爆発的噴火】  10月8日午前1時46分頃、阿蘇中岳第1火口で爆発的噴火が36年ぶりに発生した。噴煙は観測史上最高の1万1千メートルにまで達し、中岳火口から約7.3キロ離れた阿蘇市坂梨地区で直径4センチ前後の噴石を確認したほか、阿蘇市などは一面火山灰に覆われた。降灰は風に乗り、大分、愛媛、香川など県外広範囲に及んだ。

阿蘇山の火山活動解説資料(福岡管区気象台地域火山監視・警報センター)↓ http://www.jma-net.go.jp/kumamoto/kakusyusiryou/aso_kaisetu20161008_3.pdf

(阿蘇市一の宮地区 降灰状況)

(国道57号・阿蘇地域 路面清掃状況)

(今回の舞台)

※休日返上で災害復旧に従事した「2016年・熊本の夏」。あの記録的猛暑の日々は、生涯、忘れることはあるまい。

(2016年12月29日)

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