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2017年を振り返る/郷土とインフラに関する「10大ニュース」

★阿蘇長陽大橋ルートの開通、二重峠トンネルの着工、白川・緑川堤防の災害復旧完了、桜町再開発事業の着工、八代港国際クルーズ拠点整備事業の着工、阿蘇くまもと空港の民営化スキーム発表、熊本駅ビル・駅前広場の開発概要の発表など、2017年の肥後熊本は熊本地震からの復旧・復興が実現していく「ステップアップの1年」であった。

 自然災害が頻発した2016年に比べ、2017年の肥後熊本は穏やかで安寧な1年であり、熊本地震からの復旧・復興が実現していく「ステップアップの1年」であった。  以下では、私の考える「郷土とインフラに関する10大ニュース」をリストアップすることで今年1年を振り返ってみた。雑誌「くまもと経済 2017年12月号」掲載の記事「回顧2017写真で振り返る〝熊本″」とも共通するが、こうしてみると、交通インフラに関連するニュースが際立って多いことがわかる。「一日も早い熊本地震からの復旧・復興を願う」県民の期待のあらわれであると思う。

(1)熊本地震で通行止めになっていた「阿蘇長陽大橋ルート」が開通  8月27日、国土交通省による権限代行事業で災害復旧工事が進めらていた「阿蘇長陽大橋ルート」が開通し、南阿蘇村中心部と立野地区との間の迂回が解消した。昨年12月24日に開通した「俵山トンネルルート」に続いて、阿蘇長陽大橋ルートの開通は、熊本地震からの復旧・復興の大きなステップ“希望の架け橋”となった。 <第80回>熊本地震で通行止めになっていた「長陽大橋ルート」が開通(2017/08/27)

(阿蘇長陽大橋ルート開通式の様子)

(2)国道57号北側復旧ルート「二重峠トンネル」着工  6月17日、国道57号北側復旧ルート「二重峠トンネル」の着工式が開催された。二重峠トンネルの掘削済延長(12月25日現在)は、本坑525m/3,659m(14%)、避難坑1,510m/3,652m(41%)となっており、「平成32年度(震災から概ね5年)での全線開通」を目標に、引き続き全力で復旧工事が進められている。 <第69回>国道57号北側復旧ルート「二重峠トンネル」着工(2017/06/19)

(国道57号北側復旧ルート・二重峠トンネル着工式の様子)

(3)H29梅雨期を前に、白川・緑川堤防の災害復旧が完了  5月31日、熊本地震で被災した緑川水系及び白川水系の河川(いずれも国土交通省管理区間、堤防等の変状は計171箇所に及んだ)の堤防の災害復旧が完了した。目標であった平成29年梅雨期前までの堤防本復旧が実現し、流域住民の安全が確保された。 <第67回>H29梅雨期を前に、白川・緑川堤防の災害復旧が完了(2017/06/04)

(白川右岸・蓮台寺地区(熊本市)の工事完成状況)

(4)熊本地震発生から1年、九州自動車道が完全復旧 4月28日、熊本地震の復旧工事のために車線規制が続いていた九州自動車道が全線4車線で交通解放された。主要幹線道路が大きな損壊を受けると、人、物の流れが滞り、経済社会的に大きなダメージを与えてしまう。熊本地震は重層的な交通ネットワークの必要性を改めて教えた。 <第60回>九州自動車道の価値と熊本地震(2017/05/03)

(5)南阿蘇鉄道の復旧、国が復旧費の97.5%を支援することに  12月22日、熊本地震で大きな被害を受け、立野駅~中松駅間が不通になっている第三セクター・南阿蘇鉄道(高森町)の全線復旧に向けた国の財政支援制度が閣議決定された。  新制度(全国モデル)は、大規模災害復興法に基づく特定大規模災害で被災した鉄道事業者が対象。▽直近3期の事業収支が赤字▽復旧費が運輸収入以上▽長期的に運行を確保する計画策定▽復旧した鉄道施設を自治体などが保有する「上下分離」方式の導入-を条件とするもので、新制度の適用により鉄道事業者の負担がなくなる(費用負担割合は、国50%、地元自治体50%)。さらに地元自治体負担分についても、国が後年度に交付税措置することで実質負担は国97.5%、自治体2.5%となる。  本新制度の南阿蘇鉄道への適用が決まったことにより、早期の復旧が期待される。 <第39回>熊本地震で被害を受けた「南阿蘇鉄道」は今(南郷谷を鉄道で行く)(2017/01/29)

(6)益城町の復興土地区画整理事業(案)、町都計審が「否決」  12月20日、熊本地震で被災した益城町中心部の木山地区で町が計画する復興土地区画整理事業について、町都市計画審議会は「住民の合意形成が不十分」などとして町の計画案を反対多数で否決した。計画案の否決を受け、町に代わって事業主体となる県は同日、12月県議会で可決したばかりの関連予算の執行凍結を決めた。  この復興土地区画整理事業は、県が4車線化を進める県道熊本高森線の木山交差点周辺の約28ヘクタールが対象で、住宅密集地で道路が狭いなどの課題があったため、区域内を商業地や住宅地などに整理し、災害時の避難場所となる公園整備や道路拡幅を実施する計画。本事業は「熊本地震からの創造的復興」のシンボル的事業であり、早期の合意形成、事業着手が期待されている。

(7)熊本地震からの復興のシンボル「桜町地区再開発事業」着工  2月1日、熊本地震からの復興のシンボルとして期待されている熊本市中心市街地の再開発事業の中核「桜町再開発事業」の起工式が盛大に催された。  本再開発事業は、九州を代表する周遊と交流の複合拠点を実現することにより「わくわくに出会う熊本新城下町」として魅力ある空間を形成することを目標に、商業施設、バスターミナル、公益施設(ホール)、ホテル、住宅、バンケット、シネマコンプレックスなど、多様な用途が一体となった複合施設を整備するもので、平成31年(2019年)夏のオープンを目標に鋭意工事が進められている。また、同施設は熊本地震を受け、防災・減災面の機能強化を盛り込み、災害発生時の防災拠点の補完施設としての役割も担う。 <第77回>熊本市街地発展の歴史(城下町から軍都、新市街を経て桜町再開発へ)(2017/08/13)

(8)熊本駅ビルと駅前広場の概要発表、賑わいと防災の拠点に 11月8日、JR九州と熊本市は2021年春の開業を目指す熊本駅ビルと白川口(東口)駅前広場の開発概要を発表した。JR九州によると、2018年春に豊肥本線・鹿児島本線下り線の鉄道高架化が完了した後、2019年春に熊本駅ビルの工事に着手し、2021年春の駅ビル開業を予定。陸の玄関口『熊本駅』に相応しい、地上12階、地下1階建ての駅ビルで、商業とホテル、立体駐車場による複合施設になるという。  一方、熊本市が整備する新たな駅前広場は、高架化に伴い駅舎が後方に下がることで生み出される空間を有効活用して、タクシー・バスの乗降・待機場、独立した一般車降車・整理場、そして広いオープンスペースが設けられ、災害時の避難場所やボランティアセンターなど復旧・支援活動の拠点としても活用されることとなった。駅前広場の整備は2019年度末の完成を目指している。 <第95回>陸の玄関口『熊本駅』周辺開発と九州新幹線の開業効果(2017/11/19)

(9)『阿蘇くまもと空港』、民営化で「創造的復興のシンボル」に  6月30日、熊本県からの要望を受けた国土交通省は「阿蘇くまもと空港」の民営化について、運営開始の時期を2020年4月頃とする基本スキーム(枠組み)案を発表した。熊本地震で被災したターミナルビルの建て替えを含めて運営権者に委ね、事業期間は48年間を想定。新ターミナルビルは2022年度中の整備完了を目指し、それまでの間は国が建設する別のビルを使う。ターミナルビルの建て替えを含めて運営権者に任せるのは全国初の事例であり、「熊本地震からの創造的復興のシンボル・起爆剤」となる骨格プロジェクトとして、関係自治体や地元経済界などから大きな期待が寄せられている。 <第97回>空の玄関口『阿蘇くまもと空港』、民営化で「創造的復興のシンボル」に(2017/12/03)

(10)八代港国際クルーズ拠点整備事業が着工  11月25日、「八代港国際クルーズ拠点整備事業」の着工式が開催された。八代港は、県内最大の国際貿易港であるが、クルーズ船専用岸壁がないことから、その整備が求められていた。こうした中、訪日クルーズ拠点港湾形成に向けた港湾法の改正が行なわれ(平成29年7月8日施行)、「国際旅客船拠点形成港湾」に指定された八代港では、関係者(国、熊本県、ロイヤル・カリビアン・クルーズ社)が連携して施設整備等を行なうことが可能となった。  官民連携の施設整備によって、クルーズ船の寄港数が増加するとともに(供用開始予定の平成32年には100回、供用から10年以内に200回の寄港を目指す)、熊本県(九州)の観光産業の活性化に資することが期待されている。 <第96回>海の玄関口『八代港』と国際クルーズ拠点整備(2017/11/26)

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回顧2017写真で振り返る〝熊本″(くまもと経済2017年12月号)

 熊本地震からの〝復興元年″と位置づけられた2017年。被害が大きかった南阿蘇村、益城町などでは、交通インフラの復旧や新たなまちづくりに向けた区画整理事業が発表されるなど、一歩ずつ復興への歩みを進めている。一方、熊本空港民営化、八代港国際クルーズ拠点整備など創造的復興ヘ向けた新たな取り組みがスタート、熊本市中心部では桜町再開発事業が着工するなど明るい話題も多い。今年、本誌で取り上げた熊本の動きを写真で振り返る。

○国道57号北側復旧ルート「二重峠トンネル」着工  阿蘇大橋周辺の斜面崩壊で寸断された国道57号の代替ルートとして、北外輪山を通る国道57号北側復旧ルートで、外輪山を貫く二重峠トンネルの工事が6月に着工し、阿蘇市側と大津町側から24時間態勢で掘削が進んでいる。  国道57号北側復旧ルートは、大津町の引水地区を起点に、熊本中核工業団地北側を進み、同町古城から阿蘇市車帰を結ぶ延長3.659kmの二重峠トンネルを通り、岡市赤水の国道57号に接続する延長約13km(片側1車線)の新ルート。工事のスピードアップを図り、2020(平成32)年度の開通を目指している。

○阿蘇長陽大橋ルート開通 南阿蘇に〝希望の懸け橋″  熊本地震で大きな被害を受け、不通となっていた南阿蘇村の村道栃の木~立野線阿蘇長陽大橋ルート(約3km)が応急復旧し、8月27目、1年4カ月ぶりに開通した。  阿蘇長陽大橋と戸下大橋を含む同ルートは、同村立野の国道57号と村中心部を通る国道325号を結ぶ当面のアクセス道路となり、阿蘇観光の玄関口としての役割をはじめ、南阿蘇住民にとっては通勤、通学の負担軽減や医療面の不安解消など、生活の利便性が向上すると同時に、村中心部と寸断され、長期避難世帯に認定されていた同村立野地区の生活再建を後押しする道路となった。また、阿蘇立野病院の診療再開、東海大学阿蘇キャンパスでの実習再開など明るいニュースも増えている。

○益城町復興計画 木山復興土地区画整理事業 県が事業主体へ  震度7の揺れを2度観測し、甚大な被害を受けた益城町では、インフラを中心とした復旧・復興が少しずつ、前へと進んでいる。損壊家屋などの解体進捗について同町が発表したゆ10月31日現在の進捗率は、公費・自費解体合わせ98.88%。今後、住まいの再建が最大の課題となり、町は災害公営住宅300戸の整備を予定している。  また、被災した同町中心部の木山地区で町が計画する復興土地区画整理事業について、県は町に代わって事業主体として施行する方針を固め、行政や商業、交通など町の主要機能が集まる中心市街地の復興を急ぐ。事業区域は県が4車線化を進める県道熊本高森線の木山交差点周辺の約28ヘクタール。住宅密集地で道路が狭いなどの課題があったため、区域内を商業地や住宅地などに整理し、災害時の避難場所となる公園整備や道路拡幅も実施する計画という。

○熊本復興のシンボルへ 19年夏の開業目指し桜町再開発着工  熊本地震からの復興のシンボルとして期待されている熊本市中心市街地の再開発事業。  その中核となる同市中央区の桜町再開発事業の起工式が2月1日、事業主体の熊本桜町再開発㈱(熊本市中央区花畑町、矢田素史社長)をはじめ、熊本市や県、経済団体の代表者ら約140人が出席し行われた。総事業費は約755億円、2019年夏の完成を目指す。同施設は熊本地震を受け、防災・減災面の機能強化を盛り込み、災害発生時の防災拠点の補完施設としての役割も担う。

○ダイエー熊本下通店跡地開発 COCOSAに長蛇の列 (省略)

○世界とつながる熊本へ 熊本空港民営化、八代港整備に動き  県は熊本空港のコンセッション方式による民間委託、八代港のロイヤルカリビアン社との連携など、創造的復興の柱として「世界とつながる熊本の創造」を掲げ、熊本復興の象徴とする考えだ。  熊本空港(益城町小谷)のコンセッション方式導入においては、8月に企業向け現地見学会が行われるなど、官民の動きが慌ただしくなってきた。熊本経済同友会は4月、「阿蘇くまもと空港コンセッション委員会」を立ち上げ、最大の関心事とも言える地元経済界の経営関与に、委員長を務める本松賢代表幹事は「地場企業が運営権者になることも想定し、地場と大手が組んだコンソーシアム(企業連合)も視野に動いていく」と前向きな意向を示し、具体的な準備を進めることを明らかにした。  一方、八代港では、国際クルーズ拠点としての期待が高まっている。  県は今年1月、米国大手クルーズ船社ロイヤルカリビアン・クルーズ社(RCL)と連携し、同港を国際クルーズ拠点として開発する意向を表明。7月には改正港湾法に伴い、国土交通省が同港を含む国内6港を「国際旅客船拠点形成港湾」に指定、民間との共同開発が可能となり、RCLに最大40年・年間150日、専用岸壁の優先利用を認める。

○インバウンドに回復の兆し 国際線復活、クルーズ船急増  昨年4月の熊本地震で激減したインバウンド(訪日外国人) の入込客が、回復の兆しを見せている。  熊本空港国際線では、昨年6月に台湾・高雄線が再開、今年4月には一年ぶりにソウル線の定期便が就航、さらに11月16日には香港線が1年7カ月ぶりに再開し、すべての国際線が事実上復活した。  また、八代港では今年、昨年の7倍となる75隻の大型クルーズ船が寄港する予定。こうした要因とともに、FITと呼ばれる個人・グループ客が県内でも増えており、「黒川」「人吉」などの温泉地は連泊需要が出始め、JR九州の観光列車「A列車で行こう」を利用し、イルカウォッチングを目的とした「天草」への日帰りツアーも人気がある。

○復興需要 県内住宅、受注量2倍に (省略)

○トップ交代 化血研、新体制で事業再構築 (省略)

○東証1部上場企業へ 平田機工 県内製造業で初 (省略)

○衆議院議員総選挙 自民が全選挙区で完勝 (省略)

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(今回の舞台)

(2017年12月31日)

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