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九州自動車道の価値と熊本地震

★熊本地震の復旧工事のために車線規制が続いていた九州自動車道が4月28日、全線4車線で交通解放された。主要幹線道路が大きな損壊を受けると、人、物の流れが滞り、経済社会的に大きなダメージを与えてしまう。熊本地震は重層的な交通ネットワークの必要性を改めて教えた。

【高速道路の役割】   昭和38年の名神高速道路(栗東~尼崎間)の開通から既に半世紀。高速道路は、急激なモータリゼーションの中、わが国経済の高度成長とその成果である豊かな暮らしを支えてきた。農業生産地や港から届く毎日の食卓に欠かせない新鮮な食材を運び、地域経済や雇用に寄与する工業団地の立地を促し、また、人々の日常活動の足として、広域化するレジャーや観光の手段として大きな役割を果たしてきた。さらに、既存の国道等の道路網と一体となって幹線ネットワークを形成することで、救急医療、災害時の支援、迂回路機能の確保といった点でも、高速道路は「命の道」として貢献している。  こうした事実(高速道路の役割やストック効果)は、学校教育の現場(教科書)においても、重要な学習テーマとして位置づけられている。

 「交通インフラが日本の経済成長・地方創生を実現する」(中学地理教科書)↓ http://media.wix.com/ugd/72a776_a5dfca11a7dc45708f708ad7c81ce391.pdf

 高速道路によるストック効果集(NEXCO西日本)↓ http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/hq/h27/1028a/pdfs/01.pdf

 道路のストック効果(国土交通省道路局)↓ http://www.mlit.go.jp/road/stock/road_stock.html

 道路のストック効果(熊本県土木部)↓ http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_13230.html

【九州自動車道の役割】  九州自動車道(国土開発幹線自動車道の法定路線名は九州縦貫自動車道鹿児島線)は、九州の中央部よりやや西側を、南北にほぼ直線に貫くルートで整備されており、大部分が国道3号やJR鹿児島本線などと並行する(ただし、熊本県八代市の八代IC以南は八代海沿岸を通過する国道3号や九州新幹線とは離れて、九州山地、矢岳高原、霧島連山栗野岳直下を長大トンネルで貫く短絡ルートとなっている)。またその機能は、九州を南北に結ぶ高速道路としてだけでなく、長崎自動車道、大分自動車道、宮崎自動車道と接続することで九州本土の各主要都市を相互に連絡する高速交通網としても機能している。  熊本県内の区間をみると、概ね3万台~4万台/日の交通量があり、九州自動車道は人流・物流の大動脈として、県内の各種経済活動を支えている。とりわけ、早期に開通した八代IC以北の区間(昭和46年6月に植木IC~熊本IC間、昭和51年11月に熊本IC~御船IC間、昭和53年12月に御船IC ~松橋IC間、昭和55年3月に松橋IC~八代IC間が開通し、本州と熊本県内主要都市が高速道路で結ばれた)沿線では、南九州や東九州エリアに比して高速道路の恩恵を早くから受けてきた。大企業の支店や工場の立地、農作物(スイカやトマトなど)の首都圏への出荷など、九州自動車道が県内産業にもたらしたストック効果は計り知れない。

 九州支社の歴史(あゆみ)(NEXCO西日本)↓ http://corp.w-nexco.co.jp/activity/branch/kyushu/history/

【熊本地震による被害と暫定復旧】  平成28年4月14日21時26分、熊本県熊本地方を震央とするマグニチュード(Mj)6.5の地震が発生(前震)、さらに、その28時間後の4月16日1時25分にはMj7.3の地震が発生し、益城町と西原村で震度7を観測した(本震)。延べ4,000回を超える余震による影響を含め、「熊本地震」は熊本~阿蘇周辺地域に甚大な被害を与えた。  県内交通の南北方向の大動脈である九州自動車道も甚大な被害を受け、熊本都市圏の東側を走る「植木IC~八代IC間」は被災後約2週間にわたり全面通行止めを余儀なくされた(4月26日 嘉島JCT~八代IC間の通行止めを解除。4月29日 植木IC~嘉島JCTの通行止めを解除。ただし、車線規制有り)。  これによる幹線道路への影響は大きく、九州自動車道と並行する直轄国道(3号、57号バイパス等)や迂回路となる国道501号等の交通渋滞が顕在化し、特に県北部から熊本市都心に流入する交通は機能麻痺の状態となった。  今回のように主要幹線道路が大きな損壊を受けると、人、モノの流れがストップし、経済社会的に大きなダメージを与えることになってしまう。“1本の幹線道路が通行不能になっても代替、迂回できる幹線道路が別にある”、今回の熊本地震は、そういう重層的な交通ネットワークの価値を改めて教えたのだと思う。

【熊本地震から1年、九州自動車道が完全復旧】 ゴールデンウィーク直前の平成29年4月28日、NEXCO西日本九州支社は、熊本地震により九州自動車道(益城熊本空港IC~松橋IC間)で進めてきた復旧工事(盛土崩壊箇所や木山川橋、路面の波打ち箇所などの復旧)を概ね完了させ、全線4車線で交通解放した。これにより、ゴールデンウィーク期間中に予測されていた渋滞が、大幅に解消されることとなった。地震後1年経って、完全な高速道路が熊本に戻ってきた瞬間である。

 平成28年熊本地震による九州自動車道(益城熊本空港IC~松橋IC間)の4車線復旧について(NEXCO西日本)↓ http://corp.w-nexco.co.jp/corporate/release/kyushu/h29/0416/

(大詰めをむかえた復旧工事の状況)

(復旧工事が完了し、全線4車線で供用された九州自動車道)

(復旧工事が完了し、全線4車線で供用された九州自動車道)

(今回の舞台)

(2017年5月3日)

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