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知多半島と愛知用水<尾張国土学⑰>

★深刻な水不足に悩む知多半島地域を再生するため、戦後、100km以上離れた木曽川から取水する大規模な用水事業が国によって実施されました。その恩恵は非常に大きく、愛知用水は地域の産業や生活を支えています。

 

全国一の「ものづくり県」を支える産業と交通インフラ

 愛知県は、優れた交通インフラなどを背景として、全国一の「ものづくり県」として躍進しており、自動車に代表される製造業の中心地として世界経済をもリードしています。

 実際、都道府県別の製造品出荷額等(2021年のデータ。経済産業省「2022年経済構造実態調査」による)をみると、愛知県は47兆8,946億円と全国の約14.5%を占めており、第2位の大阪府(18兆6,058億円、同5.6%)、第3位の神奈川県(17兆3,752億円、同5.3%)等を大きく引き離し、45年連続全国第一位となっています。

 また、都道府県別の年間商品販売額(経済産業省「令和3年経済センサス」による)でみても、愛知県は第3位(39兆4,199億円)であり、都道府県別の農業産出額(農林水産省「令和4年農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)」による)でも、愛知県は全国第8位(3,114億円)となっており、工業県のイメージが強い愛知県ですが、商業や農・水産業もとても盛んです。

 

 あいちの魅力(産業構造・事業環境)|愛知県

 

 経済構造実態調査(製造業事業所調査)の結果|経済産業省

 

 あいちの魅力(交通インフラ)|愛知県

 

 

知多(半島)地域の産業発展とインフラ

 知多(半島)地域の北中部には、名古屋南部及び衣浦西部の両臨海工業地帯があり、今後も基幹産業地帯としての発展が期待されています。

 また、この地域の農業は、米、野菜、花き、果樹、畜産(とりわけ酪農)等高い生産性をあげており、漁業生産量は県内の約半分を占めています。

 そして、これら知多(半島)地域の産業(工業・農業)は、知多半島道路を始めとする交通インフラの整備と愛知用水を始めとする農業インフラの整備によって飛躍的な発展を遂げてきました。

 

 知多地域の概要|愛知県

 

愛知県内の用水と「愛知用水」のあらまし

 愛知県内では、古くから大規模な用水(路)の整備が進められてきており、このブログでは豊川水系、矢作川水系、木曽川水系、庄内川水系に沿って、その多くを紹介してきたところです。

 

 


 今回紹介する「愛知用水」は、知多半島の深刻な水不足を背景として、戦後に整備された大規模用水(岐阜県加茂郡八百津町から知多半島南端の愛知県知多郡南知多町に至る112kmの幹線水路と、幹線水路から分岐して農業用の水を導く支線水路1,012kmからなる)を指します。

 もともと、知多半島はそのほとんどが緩やかな丘陵地からなり、大きな河川や湖沼がないことから、水不足は深刻で、地域の人々は井戸やため池をつくって渇水に備えていました。しかし、1947年(昭和22年)の大干ばつによる農業被害は甚大で、これを切っ掛けとして、水に困った知多半島の人々は国家事業として愛知用水をつくるよう働きかけを始めました。

 1955年(昭和30年)の愛知用水公団の設立により、水量が豊富な木曽川から100km以上にわたる用水路をつくり、知多半島に水を運ぶという世紀の大事業「愛知用水」の第一歩がスタートしました。その後、1957年(昭和32年)からは工事に着手。事業資金の一部を世界銀行から借り入れるとともに、海外(アメリカ)の優れた土木技術と最新の建設機械を用い、わずか4年で工事が完成しました。1961年(昭和36年)9月30日は、木曽川の水が愛知用水を流れ、知多半島へ届くという歴史的な日となりました。

 さらに、1981年(昭和56年)度からは、新たな水需要と施設の老朽化に対応するため、施設機能の拡充と若返りを図る「愛知用水二期事業」が開始され、23年の歳月と総事業費2,855億円を投じて2004年(平成16年)度に完成しています。

 愛知用水の水は、現在では、岐阜県可児郡御嵩町から尾張東北部、西三河西部及び知多半島の先端の南知多町まで27の市町にある約15,000haの田・畑で農業用水として利用されているとともに、愛知県春日井市の高蔵寺ニュータウンや、瀬戸市、尾張旭市などの11市町の家庭約83万人への水道用水として、また岐阜県可児市や名古屋市南部及び埋立造成した名古屋南部臨海工業地帯への工業用水としても利用されています。

 

 (独)水資源機構 愛知用水総合管理所

 

 愛知用水/地域の礎|水土の礎((一社)農業農村整備情報総合センター)

 

 愛知用水|愛知県

 

 


入鹿池(犬山市)

※江戸時代初期からあるため池。愛知用水二期事業にて導水管と繋がれ、2005年(平成17年)からは入鹿池の余剰水を愛知用水幹線に流したり、逆に愛知用水からの水を入鹿用水路に流している。


東郷調整池[通称:愛知池](日進市・みよし市・愛知郡東郷町)

※愛知池は高さ31m、有効超水量900万m3のアースダムで、用水の調整池としての機能のほか、小水力発電(最大出力1,000kw)や憩いの場(湖面は全国有数の漕艇競技場、周辺はウォーキングコース)としても利用されている。


愛知用水竣工碑と感謝之碑(愛知郡東郷町)


愛知用水幹線水路(愛知郡東郷町) 


大堀緑道(東海市)

※愛知用水の水路(幹線水路)が地下に埋設されている。


(今回の舞台)

 

 

(2024年06月23日)

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