LRT都市サミット宇都宮2024<路面電車連携①>
★豊橋「市電」には、大正14年の開業以来(約100年間)、様々な困難を乗り越え、多くの市民に親しまれながら運営(継続)されてきた歴史があります。
「LRT都市サミット宇都宮2024」開催
1月26日・27日、栃木県宇都宮市のライトキューブ宇都宮において「LRT都市サミット」が開催されました。
LRT都市サミットは、路面電車のLRT(Light Rail Transit)化に取り組み、人と環境にやさしいまちづくりを目指す都市の市長等が集まり、意見交換等を通して、それぞれの都市の取組みや魅力を全国に発信するとともに、一層の都市間連携を図るために概ね隔年で開催されているものです。
【第1回】広島市(2009年)
【第2回】富山市(2011年)
【第3回】熊本市(2012年)
【第4回】豊橋市(2013年)
【第5回】鹿児島市(2015年)
【第6回】松山市(2017年)
【第7回】札幌市(2019年)
【第8回】長崎市(2021年)
【第9回】宇都宮市(2024年)
9回目となる今回のサミットでは、全国10都市(札幌市・宇都宮市・富山市・豊橋市・岡山市・広島市・松山市・長崎市・熊本市・鹿児島市)からの取組事例紹介が行われた後、「ゼロからの挑戦/まちの未来を紡ぐLRT」をテーマとした首長会議での議論を通して、未来に向けた決意についてまとめたサミット宣言が採択されました。
「路面電車のまち」大集合 LRTの可能性探る|とちぎテレビ2024.1.27
LRTが果たす役割議論 宇都宮でサミット開幕 全国から10市集結|下野新聞2024.1.27
宇都宮でLRT都市サミット 中川家・礼二さんノリノリ トーク大盛況|東京新聞2024.1.28
宇都宮でLRT都市サミットを開催 「サミット宣言」も採択|朝日新聞デジタル2024.1.27
LRT都市サミット宇都宮2024
LRTの導入支援|国土交通省道路局
LRT都市サミット宇都宮2024の様子①(ライトキューブ宇都宮)
LRT都市サミット宇都宮2024の様子②(ライトキューブ宇都宮)
LRT都市サミット宇都宮2024大会プログラムとサミット宣言
宇都宮LRT(栃木県宇都宮市)
豊橋市の路面電車を活かしたまちづくり
当日、小職が発表した取組事例スライドは以下の通りです。
豊橋市の路面電車を活かしたまちづくり
※表紙は、長年ライフワークとして「路面電車のある風景」を描き続けてくださっている画家・伊奈彦定氏の作品で、豊橋駅前の新たなシンボルとして令和3年に開業した再開発ビル「エムキャンパス」の前を走る路面電車が描かれています。
豊橋市の概要
※豊橋市は、愛知県の東部にある人口約37万人の中核市で、新幹線により、東京や大阪から約80分でアクセスすることができます。三河港や豊川用水といったインフラの恩恵を受け、工業や農業も盛んで、「ロケのまち」としても有名です。また、「共働き子育てしやすい街」として2年連続全国3位の評価をいただいています。
都市計画における路面電車の位置づけ
※令和3年に策定した都市計画マスタープランでは、持続可能な都市構造となるようコンパクトなまちづくりを推進しており、公共交通は市民の生活などを支える「軸」として位置付けています。また、立地適正化計画において、路面電車の沿線は「歩いて暮らせるまち区域」に設定しており、当該区域への移住促進を図っているところです。
路面電車の概要(沿線施設)①
※本市の路面電車は豊橋鉄道(株)が運営しており、大正14年の開業以来、約100年の歴史を有しています。運賃は180円均一で、5時台の始発から23時台の終電まで、現在も市民の大切な足として活躍しています。路面電車の沿線には、子育て関連施設や文化・芸術施設を含め、数多くの施設が立地しており、新たに多目的屋内施設(新アリーナ)の整備も進められているところです。
路面電車の概要(沿線施設)②
※新アリーナは、豊橋駅前から数えて6番目の電停「豊橋公園前」から歩いて直ぐの立地、豊橋公園東側エリアに整備することとしており、オープンは令和9年度を予定しています。イベントなどの開催時には、主たる公共交通機関の一つとして、路面電車も大きな役割を担うことになります。
路面電車の輸送人員と行政人口の推移
※行政人口は平成20年度をピークとして減少する中、コロナ禍前までは輸送人員は緩やかに増加していましたが、現在はコロナ禍の影響や更なる行政人口の減少により、利用者の確保が難しくなっています。
路面電車の利用促進に向けた行政の取組み
※豊橋市では、停留場のバリアフリー化や軌道敷の改修などにかかる費用に対して、事業者への補助を行っているほか、事業者と連携しながら各種の利用促進策を講じています。
最近の路面電車に関する取組み
※こちらは、昨年末から始めたホットな取組み、「絵本の駅」。公共交通に乗車する子育て世代の不安を少しでも解消しようと、駅の改札などで絵本を無償で貸し出しているものです。絵本や本棚はリサイクル品を活用しています。
路面電車沿線の賑わい
※路面電車沿線の賑わいを創出するため、豊橋市やTMOが中心になって実施している様々なイベントの例です。カーフリーデーイベントでは、MaaSの啓発活動も行っています。
路面電車の利用促進に向けた市民の取組み
※豊橋市には33年の歴史を持つ「とよはし市電を愛する会」という市民団体があります。4月10日を市電の日と定め、市電を愛する会を中心に、豊橋鉄道(株)、豊橋市などが一緒になってイベントを実施しています。令和4年度には、創立30周年記念式典が開催されました。
路面電車の利用促進に向けた交通事業者の取組み
※交通事業者である豊橋鉄道(株)も、夏に運行する「納涼ビール電車」や、冬に運行する「おでんしゃ」など、様々な取組を主体的に行っています。今年のビール電車は約2,000人の方が利用されました。
路面電車の多様な活用事例
※路面電車の活用例は他にもあります。左の写真は、豊橋にキャンパスのある愛知大学のプロレス同好会が主催した日本初の「市電プロレス」。同好会の熱意が事業者に伝わり、「地元の学生を応援しよう」ということで実現しました。右の写真は、地元の農協が開催を予定しているもので、豊橋の農産物で作った駅弁を路面電車で食べ、地産地消の推進とともに路面電車をPRするものです。
「まちの風景」に溶け込んでいる豊橋市電
※豊橋の路面電車は、このように「まちの風景」に溶け込み、市民の生活に欠かせないものとなっています。路面電車を行政、市民、事業者が一体となって支え、まちづくりに活かしていくことが今後とも必要です。
豊橋市の路面電車には、大正14年(1925年)の開業以来、約100年の歴史があります。この間、戦時中の豊橋大空襲による全線不通や、モータリゼーションの進展による支線廃止など、様々な困難に遭遇しましたが、都度これらの困難を乗り越え、地域の貴重な足として多くの市民に親しまれながら運営(継続)されてきた歴史があります。
昭和の最後から平成の初めの頃にかけては、まちづくりの一環として、路線の延伸(昭和57年、岩田運動公園前まで約600mの路線延長)や、駅前停留所の刷新(平成10年、リニューアルした豊橋駅前ペデストリアンデッキ直下へ乗り入れ)が行われました。市民団体「とよはし市電を愛する会」が発足したのも(平成2年)、豊橋鉄道(株)が「納涼ビール電車」を企画・運行したのも(平成5年)ちょうどこの頃になります。
路面電車の利用促進にかかる行政・交通事業者・市民の間の連携はその後も継続され、平成20年に全面低床式車両(LRV:愛称「ほっトラム」)が導入された際には、国や市からの支援だけでなく、市民の方々からいただいた多大な寄付もその実現を後押ししました。
豊橋の路面電車は、市営の交通機関ではないのですが、市民からは「市電(しでん)」の愛称で長く親しまれてきました。この「市電」に対する市民の愛着が「とよはし市電を愛する会」の発足・活動に繋がり、路面電車の利用促進にかかる行政・交通事業者・市民間の連携を強固なモノにしてくれているのだと思います。
現在では東海地方に残る唯一の路面電車であり、まちづくりや観光面でも豊橋市のシンボルとなっている「市電」を、持続可能な交通システムとして残していけるよう、引き続き関係機関(者)が連携して対応していくことが求められています。
路面電車について|豊橋市
豊橋鉄道市内線|豊橋鉄道
とよはし市電を愛する会
(今回の舞台)
(2024年02月11日)
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