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美里町にある近世生産インフラ「柏川井手と雄亀滝橋」

★2世紀前に完成したインフラ遺産「柏川井手と雄亀滝橋」は、現在も農業用水を供給する役割を担い続けるとともに、「ありのままの美里を歩く」フットパスの人気コースとして、多くの人々を集めている。

 美里町は、熊本県のほぼ中央に位置し、総面積の約4の3を森林が占める典型的な中山間地域である。この地域は、古代から一級河川緑川とその支流に沿って集落が形成され、中世には阿蘇氏領や甲佐神社領として、近世には加藤氏領・細川氏領として発展してきた。近代以降は、明治22年の町村制施行、昭和の大合併(昭和30年)、平成の大合併(平成16年)を経て、平成16年11月1日から「美里町」となった。美里町の町名は、全国から公募した中から選考し「いつまでも美しいふる里でありますように」等の理由からこの名称となったとのことである。

 位置及び地勢(美里町ホームページ)↓ http://www.town.kumamoto-misato.lg.jp/q/aview/26/137.html

 美里町には、里山や田園地帯、古い町並みが残り、豊かな観光資源(水源、石橋、史跡・文化財など)、アウトドア・スポットにも恵まれている。このため、町では「ありのままの美里を歩く」フットパスが大人気。町内には15のコースが設定されており、美里町ならではの風景や、地元の人との温かな触れ合いが楽しめる。

 美里町石橋マップ

 美里町アウトドアマップ http://www.town.kumamoto-misato.lg.jp/q/list/75.html

 美里フットパス協会↓ https://misatofp.jimdo.com/

 今回のブログで紹介する近世のインフラ遺産「柏川井手と雄亀滝橋」を巡るフットパス・コースもその一つで、「江戸末期に拓かれた用水路。たくさんの田んぼを開く為に、水路が高い山中を流れています。途中には難工事で完成した雄亀滝橋。それを感じさせない清らかな水の音を聞きながら、1/1000の勾配のゆるやかな道を歩きます(コース距離:約6㎞、所要時間:約130分)」と紹介されているコースは、スタート地点から下るようにしないと(高低差がそれありにあるので)、意外に大変なルートである。

フットパス・柏川井手コース~水の音を聞きながら歩く~(美里町観光ホームページ)↓ http://misato.town/footpath.html?id=5

【柏川井手】  「柏川井手」は、旧 砥用町(ともちまち:現 美里町)の南部に位置する延長約11kmの農業用水路で、水不足が深刻な石野村以下数十箇村の灌漑(新田開発)のため、当時の砥用手永の惣庄屋・三隅丈八によって敷設された。緑川支流の柏川から取水し、「急峻な山腹」を開削してつくられた柏川井手は、事業着手から6年をかけて文政2年(1819年)に完成、現在も、地域の貴重な農業用施設として活用されている。三隅家文書には、柏川井手開削(雄亀滝橋架橋)事業について「砥用国始以来ノ大業」と記されており、かなりの難工事であったことがうかがえる。実際に歩いてみるとわかるが、本当に「急峻な山腹」を開削してつくられた井手である。先人達の苦労に思いを馳せざるをえない。

 砥用国始以来の大業「柏川井手」(農林水産省ホームページ)↓ http://www.maff.go.jp/j/nousin/sekkei/museum/m_kakuti/57_kasiwa/

【雄亀滝橋】  「雄亀滝橋」(おけだけばし:熊本県重要文化財)は、柏川井手の開削にあたり、当惑谷と呼ばれる深い谷に水を通すために設置されたアーチ型水路橋で、文化14年(1817年)、種山石工の棟梁・岩永三五郎によって架橋された。  橋は凝灰岩を使った単一アーチ橋で、橋上の路面には、塩を混ぜた漆喰により漏水防止が施された石樋の水路が埋設されている。同じ水路橋の「通潤橋」(国指定重要文化財)は、この橋を参考にしたといわれている。  架橋後200年を経た現在も、雄亀滝橋は、農地(約110ha)へ農業用水を供給する役目を担い続けており、また、県内の架橋年代がわかる現役用水橋の中では最古の石橋として、多くの人々を集めている(ただし、現在は大規模な修復工事が実施されているため、現地で雄亀滝橋の雄姿を見ることは出来ない)。

 雄亀滝橋(おけだけばし)/石橋案内(美里町ホームページ)↓ http://www.town.kumamoto-misato.lg.jp/q/aview/72/1038.html

 雄亀滝橋/石橋ガイドブック「くまもと石橋くるりたび」(熊本県宇城地域振興局)↓ http://www.pref.kumamoto.jp/common/UploadFileOutput.ashx?c_id=3&id=2035&sub_id=1&flid=11&dan_id=1

 熊本県砥用町における柏川井手と眼鏡橋(J-Stage)↓ https://www.jstage.jst.go.jp/article/aijsaxx/69.2/0/69.2_KJ00004445659/_pdf

(柏川井手取水口:柏川森林公園)

(柏川井手:上流開渠部)

(柏川井手:暗渠部) ※現在は、柏川井手のかなりの区間が暗渠になっている。

(柏川井手と雄亀滝橋)

(修復工事中の雄亀滝橋)

※現在、雄亀滝橋では、大規模な修復工事が実施されている(橋上の通行は可能)。 https://www.facebook.com/%E9%9B%84%E4%BA%80%E6%BB%9D%E6%A9%8B%E3%81%8A%E3%81%91%E3%81%A0%E3%81%91%E3%81%B0%E3%81%97-346670865356214/

(雄亀滝橋説明板)

(柏川井手記念碑)

(石野地区の農地)

(清水地区の農地)

(美里フットパス#5「柏川井手コース」終点近くにある「霊台橋」)

(今回の舞台)

(2018年5月27日)

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