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西原村の「大切畑ため池」は今

★熊本地震で大きな被害を受けた「大切畑地区」と地域を支える生産インフラ「大切畑ため池」の早期復旧を願ってやまない。

【熊本地震で被災した「俵山トンネルルート」と「大切畑ため池」】  阿蘇外輪山の西麓に位置し、熊本市から南阿蘇観光への玄関口にある「西原村」。県道28号熊本高森線(俵山トンネルルート)は、この西原村を横断する主要幹線道路で、沿線には観光・交流施設、直売施設等が整備され、ドライブやレジャーなどで来訪する観光客も年々増加傾向にあった。  2016年(平成28年)4月16日に発生した「平成28年熊本地震」で、西原村は震度7を観測。俵山トンネルルートも、大切畑大橋(265m)、桑鶴大橋(160m)、扇の坂橋(128m)、俵山大橋(140m)、俵山トンネル(2,057m)など主要な構造物を中心に甚大な被害を受け、西原村から南阿蘇村に至る区間で全面通行止めを余儀なくされた。

 にしはら村観光(西原村公式HP)↓ http://www.vill.nishihara.kumamoto.jp/profile/sightseeing/sight.html

 特報・熊本地震/「俵山トンネル崩落」、12km歩いて見た現場(日経コンストラクション)↓ http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/atcl/cntnews/15/041500329/042600031/

 しかし、大規模災害復興法に基づく全国初の直轄権限代行事業として国土交通省によって復旧工事が進められた結果、同年12月24日には、俵山トンネル(2,057m)の復旧工事が完了し、村道(旧道)を一部活用した暫定ルートで俵山トンネルルートは供用。熊本市と南阿蘇を結ぶ東西方向の交通が回復したことにより、移動時間の短縮や冬期の安全な通行確保ということだけでなく、南阿蘇地域住民の生活再建、阿蘇周辺地域の物流の円滑化や観光振興など、熊本地震からの本格的な復旧・復興に向けて大きな弾みとなった。

 復旧工事の状況(開通式展示パネル)(PDF) http://docs.wixstatic.com/ugd/72a776_3923e036bc2a4830ba412bb83df36f35.pdf

 橋梁の被災状況(開通式展示パネル)(PDF) http://docs.wixstatic.com/ugd/72a776_a109816b25fe425b9019807545381cee.pdf

 さらに昨年(2017年)12月14日には、扇の坂橋(128m)・すすきの原橋(43m)の復旧工事が完了するとともに、俵山大橋(140m)も仮橋での通行が可能となったことから、西原村鳥子地区(L=2.3km)本線の交通開放(部分開通)が実現。さらに安全で快適な通行が可能となった。

 鳥子地区の交通開放(部分開通)を実施(国土交通省熊本復興事務所)↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto_r/pdf/information/05.pdf

(大切畑大橋の復旧工事の状況)

 熊本地震では、俵山トンネルルート(暫定供用ルート)の起点・大切畑大橋の近傍に位置する農業用ダム「大切畑ため池」も甚大な被害を受けた。地震発生直後は、決壊の危機にあるとして、住民に対して避難勧告も出された。その後の調査により、決壊するおそれはないと確認されたものの、堤体や洪水吐のひび割れ等により大量の漏水が発生していたため、ため池の水を抜き、水を安定して流下させる措置が取られた。  その後、有識者で構成する「大切畑ダム(ため池)技術検討専門会議」(委員長、長谷川高士・京都大名誉教授)が熊本県によって設置され、大切畑ため池(ダム)の復旧に関する技術的検討が進められてきた。

 ため池をめぐる状況について(農林水産省)↓ http://www.higosanae.or.jp/topics/20171117_07.pdf

(大切畑ため池の現状)

【大切畑ため池を築造した惣庄屋・矢野甚兵衛】  「大切畑ため池」は、今から約160年前の安政6年に、布田手永の惣庄屋・矢野甚兵衛の手によって鳥子川に築造(築堤)された農業用ため池である。ここ熊本では、初代肥後熊本藩主・加藤清正公による国土(郷土)づくりの功績に脚光が当てられがちだが、現代にも引き継がれている熊本のインフラ整備は、230年を超えてこの国を統治した細川氏の功績によるところも小さくない。大切畑ため池も、細川藩政下で(江戸末期に)整備されたものであり、西原村など郷土の生産インフラの礎として、地域の豊かな生活を支えてきた。  「大切畑ため池」は戦後になって改修され、高さ23メートル、総貯水容量は85万1,000立方メートルのアースダムとして1975年(昭和50年)度に完成、近代的なダムに生まれ変わった。水田やサツマイモ畑など、西原村・益城町・菊陽町の広大な農地を潤すとともに、地域の防火用水としても利用されるなど、その役割は極めて重要であった。  また、ため池の周囲には1周約2kmの遊歩道が整備され、桜並木が満開になる花見シーズンには多くの観光客で賑わっていた。2010年(平成22年)には、農林水産省の「ため池百選」の1つにも選定されている。

※手永(制)と惣庄屋・・・江戸時代に細川家がその領地に導入した行政制度。領内を「手永」と呼ばれる行政区画に分けて村を束ね、責任者として惣庄屋を置いた。

 大切畑ダム(熊本県観光サイト なごみ紀行)↓ http://kumanago.jp/event/?mode=detail&id=430000000451&isEvent=&isSpot=1

 大切畑ダム/ダム便覧(日本ダム協会)↓ http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranA/All.cgi?db4=2669

 ため池百選 大切畑ため池(農林水産省)↓ http://www.maff.go.jp/j/nousin/bousai/tameike/pdf/4301_ookiri_hata.pdf

【大切畑ため池の復旧は・・・】  大切畑ため池の復旧について、2017年12月17日付け地元紙(熊本日日新聞)は、『大切畑ダム270メートル上流へ 来年度着工 技術検討委 県に提言』という見出しで、以下の記事を掲載している。  「熊本地震で堤体(ダム本体)などが損傷した西原村の農業用ため池「大切畑ダム」について、復旧工法などを検討する県の「技術検討委員会」(委員長、長谷川高士・京都大名誉教授)は26日、堤体を現在より270メートル上流に移動する案を県に提言した。  地震後に県が策定した計画では、現在地での復旧を前提としており、県は検討委の提言を基に本年度中に事業計画を変更する。当初計画での有効貯水量は72万立方メートルだったが、変更後は未定。堤体を上流に移すため、周辺の農地や林地を買収する必要が生じる。2018年度末に着工し、工期は5年程度を見込んでいる。ダムのタイプについては、以前と同様にフィルダム(土や岩などで作るダム)を基本とするよう提言した。」

 年が明けて(2018年)1月21日(日)、熊本地震で甚大な被害を受けた西畑村の「大切畑」・「風当」両地区で、復興を祈願して合同のドンドヤが開催された。多くの住民が仮設住宅など地区外で暮らす両地区は、現在、合同で集落再生計画を協議中であるが、この日は両地区の住民約120人が一緒に写真に納まり、「復興に向けて、力を合わせて頑張ろう!」と気勢をあげた。 さらに、2月3(土)と4日(日)には、大切畑ため池のほど近くにある俵山萌の里前のツンガ塚(馬頭山)で2600本のキャンドルを灯す西原村の冬のイベント『冬あかり』が開催される予定である。

 冬あかり/イベント情報(西原村)↓ http://www.vill.nishihara.kumamoto.jp/profile/sightseeing/_1256.html

 熊本地震で大きな被害を受けた「大切畑地区」と地域を支える生産インフラ「大切畑ため池」の早期復旧を願ってやまない。

(今回の舞台)

(2018年1月28日)

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