祝・南阿蘇鉄道全線運転再開!
熊本地震から7年3ヶ月、念願だった南阿蘇鉄道の全線運転再開が実現しました。この日を迎えるにあたり、ご尽力された関係の皆様に心より感謝申し上げます。
南阿蘇鉄道の思い出①(熊本地震発生前)
2015年(平成27年)12月16日に熊本に赴任して、最初に向かったのが肥後国の一の宮「阿蘇神社」。管内の安全祈願が目的でした。当時は、国指定の重要文化財である楼門も健在で、その雄姿は今もしっかりと私の目に焼き付いています。
また、赴任直後の年末年始は、購入したばかりの6段変速の自転車(といってもママチャリですが)で一級河川・白川と緑川の探検に出かけました。白川については、当時私が勤務していた熊本河川国道事務所の改修事業箇所や加藤清正公が手がけられた渡鹿堰などを見て回りました。また、JR豊肥本線や「南阿蘇鉄道」を使って、白川上・中流にある馬場楠堰と鼻ぐり井手、瀬田堰と下井手・上井手、更には白川水源にまで足を伸ばしたことを覚えています。
日本一長い駅名の「南阿蘇水の生まれる里白水高原駅」in2015・12
白川水源in2015・12
南阿蘇鉄道の思い出②(熊本地震発生後)
しかし、2016年(平成28年)4月16日未明に起きた熊本地震(本震)によって、「南阿蘇鉄道」は甚大な被害を受けてしまいます。被災前の全線17.7kmに対し、比較的早期に(=これまでに)復旧・運行再開できた区間は約7km(中松駅~高森駅間)のみ。特に立野〜長陽間は、2つのトンネルで内壁の崩落や亀裂が見つかり、鉄橋の橋桁も損傷、線路が250mにわたって流出するなどの甚大な被害であったため、鉄道事業者である南阿蘇鉄道(株)単独で残り区間(立野駅~中松駅間)の復旧を行うことは困難な状況にありました。
こうした中、国土交通大臣を始めとする政府関係者が熊本地震対応のため現地視察に訪れるたびに、高森町長であり南阿蘇鉄道代表取締役社長でもある草村大成さんが、現場の最前線で、南阿蘇鉄道の再開に向けた国による支援を何とか取り付けようと、熱心に説明(要請)されている姿を幾度となく拝見しておりました。
熊本地震により被害を受けた第一白川橋梁
発災から7年3ヶ月、南阿蘇鉄道が全線運転再開
先週の土曜日(2023年7月15日)、7年3カ月ぶりに南阿蘇鉄道全線(立野~高森17.7km)での運転が再開されたとの報道に接しました。国や熊本県による大幅な財政的支援を受け、管理・運営形態を「上下分離方式」とするとともに、JR豊肥本線・肥後大津駅までの乗り入れや新型車両「MT-4000形」の導入などによって、これまで以上に魅力ある南阿蘇鉄道が再スタートしたとのことです。
地震・洪水・土砂崩落といった大規模自然災害を切っ掛けとして、鉄道路線(ローカル線)が廃止される事例が数多くある中で、南阿蘇鉄道は見事に復活を遂げることができました。この日を迎えるにあたり、ご尽力いただいた関係の皆様に心より感謝申し上げますとともに、南阿蘇鉄道がこれまで以上に地域交通の要として、また観光振興を支える基礎インフラとして大いに利用されることを期待しています。
南阿蘇鉄道公式ホームページ
南阿蘇鉄道が全線再開 熊本地震から7年3カ月ぶり 始発便、高森から立野へ JR肥後大津駅への乗り入れも開始|熊本日日新聞(2023年7月15日)
「長かった」 南阿蘇の鉄道がきょう7年ぶり全線復旧 建設当時「国鉄で最も高い橋」も新たに|乗りものニュース(2023年7月15日)
南阿蘇鉄道「上下分離」認定、4月1日から 全線再開に向け準備は最終段階に|鉄道プレスネット(2023年3月11日)
南阿蘇鉄道の全線再開「7月15日」に 7年3カ月ぶり、JR豊肥本線への乗り入れも|鉄道プレスネット(2023年2月4日)
南阿蘇鉄道の新型車両「MT-4000形」詳細発表、来年1月から乗務員訓練など開始|鉄道プレスネット(2022年12月28日)
南阿蘇鉄道の豊肥本線乗り入れ、全線復旧と「同時」目指す 熊本県が予算計上|鉄道プレスネット(2022年2月13日)
<補章:中九州横断道路・国道57号滝室坂トンネル貫通>
南阿蘇鉄道の全線運転再開(令和5年7月15日)から遡ること約1ヶ月前の6月18日、カルデラ北部の阿蘇谷では中九州横断道路を構成する国道57号滝室坂道路・滝室坂トンネルの貫通式が開催されました。
2年半勤務した熊本を発つ直前の平成30年6月24日、滝室坂トンネルの着工式を開催させていただいたことは記憶に新しいところです(リダンダンシーを確保する(『天城橋』開通と滝室坂トンネル着工)<熊本国土学第127回>。
その後、阿蘇の外輪山を抜く本トンネルの施工にあたっては、極めて高度な技術力が求められたと思いますが、無事安全に貫通したとの情報に接し、とても安堵しています。
熊本市と大分市を結ぶ「中九州横断道路」は、平成28年熊本地震を経験した熊本県にとって、また、南海トラフ巨大地震・津波に備えなければならない九州全体にとって、「リダンダンシーの確保」の要となる最重要プロジェクトの一つです。引き続き早期供用に向けて、事業推進が図られることを遠く豊橋の地から祈念しています。
滝室坂トンネルで貫通式 熊本県阿蘇市の国道57号 一の宮町坂梨と波野4834メートル結ぶ|熊本日日新聞
中九州横断道路 国道57号滝室坂道路 滝室坂トンネル(仮称)貫通式【ライブ配信】|阿蘇インターネット放送局 WebTVアソ
阿蘇カルデラ壁を4.8kmのトンネルが貫く! 中九州横断道路「滝室坂トンネル」貫通へ|くるまのニュース
中九州横断道路 滝室坂道路|熊本河川国道事務所
(2023年07月23日)