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愛知県の交通の様子<『かがやく豊橋』⑬>

★愛知県は、優れた交通インフラを背景として、全国一の「ものづくり県」として躍進しており、自動車に代表される製造業の中心地として世界経済をもリードしています。


中学・地理教育/中部地方の最大の特徴は「産業」

 中学校の社会科(地理的分野)教科書では、防災・減災、水・国土管理、農業基盤整備、交通インフラ、都市開発など幅広い分野において、「国土への働きかけの歴史やインフラ整備による産業・生活への影響」に関する記述が数多く取り上げられています。とりわけ、高速道路を代表とする交通インフラのストック効果に関連する図表が充実しています。

 例えば、学習単元「日本の諸地域」は、日本の様々な地域を地誌的に取り上げてわが国の国土に関する地理的認識を深める、中学校社会科(地理的分野)を特色付ける学習単元です。ただし、それぞれの地域の学習で自然の特色、産業の特色などの項目を羅列的,並列的に取り上げると、学習内容が過剰となり、学習負担が大きくなるとともに地域的特色を理解することも困難となりますので、「中核方式」と呼ばれる効率的・効果的な学習方法が採用されています。これは、日本全国を幾つかの地域に区分し、対象とする地域の諸現象のうち最も重要なものに着目して、それを中核(考察の仕方)として記述を進めていく動態地誌的学習方法を指します。

 現行の学習指導要領では、次の①~⑤の5項目が中核的事項(考察の仕方)として指定されており、中学・社会科(地理的分野)の教科書を発行している4社(帝国書院、東京書籍、教育出版、日本文教出版)が選択した「地域区分と中核的事項の組み合わせ」は、次の通りとなっています。

 ①自然環境を中核とした考察の仕方

 ②人口や都市・村落を中核とした考察の仕方

 ③産業を中核とした考察の仕方

 ④交通や通信を中核とした考察の仕方

 ⑤その他の事象を中核とした考察の仕方


地域区分と中核的事項の組み合わせ


 このように、中部地方の地誌については、すべての教科書が「産業」を中核テーマとしており、いずれの教科書においても「インフラ整備による産業の発展」に関する話題が数多く取り上げられています。また、地形的制約から独自の文化や産業が生まれたという歴史的背景を踏まえ、三つの地域(東海、中央高地、北陸)に区分して、それぞれの特色を説明しているというのも4つの教科書共通の特徴です。

 このうち、東海地方については、交通網整備によって結びつきを強める名古屋大都市圏、東名高速道路に沿って発展する工業・農業、名古屋港や中部国際空港からの工業製品(自動車など)の輸出、愛知用水や豊川用水の整備による農業振興、といった内容がほとんどの教科書で取り上げられています。

 東海の中心都市である名古屋市の発展について、帝国書院は、「名古屋市は、鉄道や道路によって岐阜県や三重県などの周辺地域と結び付き、工業の発展を背景に成長して、名古屋大都市圏を形成してきました。現在は、東京と京阪神に次いで、日本で三番目に人口が多く集まる大都市圏となっています。交通の大動脈である東海道新幹線や東名・名神高速道路、中部国際空港などによってさまざまな地域と結び付く名古屋大都市圏は、今後開通予定のリニア中央新幹線も加えて、国内だけでなく世界ともさらに結び付きを強めることを目指しています」と解説しています。

 また、(同じく)帝国書院は、「渥美半島は、大きな河川がなく、台地や砂丘が多い地域のため、昔は水不足に悩まされ、作物の栽培が難しい地域でした。しかし、1968年に豊川用水という大規模な用水路が整備されたことにより、この地域は都市向けに野菜や花などを栽培する園芸農業が盛んな地域へと変化しました。菊の栽培では、温室の中で電灯を照らして光を当て(電照栽培)、日照時間を延ばすことで成長を抑える抑制栽培が行われています。静岡県でも、ガラス温室やビニールハウスを用いて、ガーベラなどの切り花やいちご、メロンの栽培が行われています。このように東海は、冬でも温暖で温室の暖房にかかる燃料費を抑えることができ、東名高速道路などを使った都市への便がよいことを生かし、施設園芸農業が盛んな地域に発展しています」と、農業インフラや交通インフラの整備・活用を通してこの地域の農業が発展してきたことを丁寧に考察しています。


 中学「地理」教科書で学ぶ「インフラのストック効果」(建設マネジメント技術2022.11)


全国一の「ものづくり県」:愛知県

 東海地方の要に位置する愛知県は、教科書に記述されているように、優れた交通インフラなどを背景として、全国一の「ものづくり県」として躍進しており、自動車に代表される製造業の中心地として世界経済をもリードしています。

 実際、都道府県別の製造品出荷額等(令和2年のデータ)をみると、愛知県は43兆9880億円(従業者4人以上の事業所)と全国の約14.6%を占めており、第2位の大阪府(16兆9758億円、同5.6%)、第3位の静岡県(16兆4513億円、同5.4%)、第4位の神奈川県(15兆8353億円、同5.2%)、第5位の兵庫県(15兆2499億円、同5.0%)等を大きく引き離し、44年連続全国第一位となっています。

 また、都道府県別の年間商品販売額(卸売業+小売業;令和2年のデータ)でみても、第1位の東京都(138兆3480億円)、第2位の大阪府(42兆9482億円)に次いで、愛知県(32兆6284億円)は第3位であり、都道府県別の農業産出額(令和3年のデータ)でも、愛知県は全国第8位(2922億円)となっており、工業県のイメージが強い愛知県ですが、商業や農・水産業もとても盛んです。


 「令和3年経済センサス‐活動調査」の製造業に関する結果(概要版)|総務省・経済産業省


 経済構造実態調査報告 2020年 三次集計結果の概要|総務省統計局


 令和3年 農業産出額及び生産農業所得(都道府県別)|農林水産省


 そして、これらの産業を支えているのが「優れた交通インフラ」なのです。県内には国際拠点港湾である名古屋港を始め、重要港湾である衣浦港や三河港があり、国内外を結ぶ流通基地として大きな役割を果たしています。また、中部国際空港(セントレア)と県営名古屋空港、JR東海道新幹線を始めとする各種鉄道インフラが整備されており、多様なビジネスニーズに的確に対応しています。さらに、これらの物流拠点や公共交通機関が、東名・名神、伊勢湾岸、中央、東名阪、東海北陸、東海環状などの高速道路を始めとする道路ネットワークとリンクすることで、日本の中央に位置する愛知県は、日本を代表する陸・海・空の交通・物流拠点に、そして我が国産業の一大拠点になっているのです。


あいちの概要/交通インフラ|愛知県


愛知県産業インフラマップ|愛知県



国際拠点港湾・名古屋港(金城ふ頭)


中部国際空港(セントレア)


JR東海道新幹線「ひかり」


名鉄特急


伊勢湾岸自動車道・名港トリトン


社会科副読本『かがやく豊橋』で学ぶ、愛知県内の交通インフラの様子

 豊橋市教育委員会が作成した小学校3・4年生向けの社会科副読本『かがやく豊橋』は、愛知県内の交通インフラ(鉄道、道路、空港、港湾)の様子を、次のように説明しています(第7章第1節「7.わたしたちの愛知県(1)県の様子」及び第7章第5節「7.わたしたちの愛知県(5)世界とつながるわたしたちの県」に掲載)。

社会科副読本『かがやく豊橋』(豊橋市教育委員会)の学習コンテンツ


(今回の舞台)



(2023年03月26日)

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