国総研が創るインフラの未来
★国土技術政策総合研究所(茨城県つくば市)は、インフラ分野における唯一の国の研究機関。国総研が主催する小学4・5年生向け企画「ボール紙で作る橋コンテスト」「橋講座」は、国土とインフラ分野の教育に大いに役立つものと期待しています。
インフラとは?
皆さんは「インフラ」という言葉をご存じでしょうか。最近では、バイデン米大統領が5年間で総額1兆ドル(約114兆円)規模のインフラ投資法案に署名し、同法が成立した・・・と、マスメディアにも大きく取り上げられていました。正確には「インフラストラクチャー (infrastructure)」という英単語のことで、道路・鉄道・港湾・ダム・上下水道・通信施設など、国民福祉の向上と国民経済の発展に必要な公共施設のことを指します。「下の (infra) 構造 (structure)」という語源を考えれば、「なるほど」と合点がいくかと思います。
事実、バイデン大統領は議会両院合同会議演説(2021年4月28日)において、「21世紀において勝つために米国は中国等と競争をしている。米国雇用計画(=インフラ投資法のベースとなる2兆ドル規模の計画)は、一世代に一度の投資であり、第二次世界大戦以降で最大の雇用計画である。この計画により、道路、橋、高速道路の近代化、港や空港、鉄道回廊、輸送線の建設といった輸送インフラのアップグレード、全ての米国人の高速インターネットによる接続、近代的な電力網の構築による雇用を生み出す」と語っています。このように世界各国の首脳は、事あるごとにインフラ整備の重要性・必要性を語っています。
(仮訳)ファクトシート:超党派のインフラ投資法案(土木学会)↓
ファクトシート原文(ホワイトハウス)↓
法案原文(アメリカ連邦議会図書館)↓
関連大統領令(ホワイトハウス)↓
わが国唯一のインフラ分野の国の研究機関「国総研」
茨城県つくば市と神奈川県横須賀市を拠点とする国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)は、住宅・社会資本(インフラ)分野における唯一の国の研究機関として、①国土を強靱化し、国民のいのちと暮らしをまもる研究、②社会の生産性と成長力を高める研究、③快適で安心な暮らしを支える研究を実施しています。
今年(2021年)4月で、発足して20年を迎えた国総研は、3管理部門(総務部、企画部、管理調整部)と11研究部(下水道、河川、土砂災害、道路交通、道路構造物、建築、住宅、都市、沿岸海洋・防災、港湾、空港)および社会資本マネジメント研究センターで構成される、まさにインフラ分野の総合研究所。調査・研究はもとより、危機管理を含めて、現場支援や現場技術の向上に貢献するために、多くの活動を実施しています。令和元年度1年間だけで見ても、9件のTEC-FORCE(高度技術班)派遣、47件の災害調査、1117件の技術指導、延べ513人の講師派遣などの数字が物語るように、常に現場とともにあることも、国総研の特徴です。
国総研ホームページ↓
国総研20年史↓
ボール紙で作る橋コンテスト
この国総研の多様な活動の中に、ユニークな取り組みがあります。それが「ボール紙で作る橋コンテスト」。本コンテストは、日本の将来を担う小学生に「ものづくりを通じて生活を支えている橋等の土木インフラの大切さを知ってもらう」ことを目的とした企画で、国総研と国立研究開発法人土木研究所が主体となって運営しています。つくば市教育委員会の後援も受けている本企画は、2020年には第27回を迎え、これまでの応募総数は11,660作品、延べ参加者数は8,910人に上ります。
ルールは簡単。工作用のボール紙(380×525mm)2枚を材料として、「ぼくの橋、わたしの橋」を作ってもらうことです。ただし、①橋は、幅30cmの川を渡れるようにすることが条件。このとき、川の中に柱などは立てられません。また、②1kgの重りを中央付近に載せても壊れないことも条件です。最後に、③色付け、かざり付けをして、「ぼくの橋、わたしの橋」を表現することでOK!。
本コンテストは小学4・5年生を対象としており、参加者の多くは、作品製作を夏休みに行っています。応募された作品は、橋梁、美術の専門家および教育関係者(計6名)が「橋としての安定感」、「デザインや仕上がりの美しさ」、「ぼくらしさ、わたしらしさ(独創性)」を評価し、それぞれが優れた作品に「構造デザイン賞」、「美術デザイン賞」、「努力賞」(各5作品)を、全ての項目が優れている作品に「最優秀賞」(3作品)を授与しています。
ボール紙で作る橋講座
また、児童が橋に関する知識と自分で作品を作る力を身につけることを目的とした公開講座「ボール紙で作る橋講座」も開催。この企画は、橋の形(橋梁形式)の話題を中心に、強さの秘密や橋の歴史等について、国総研の専門分野(橋梁研究室)の若手研究者が、分かり易く説明している「橋の話 ~なぜこんな形の橋があるの?~」と、つくば市内のペーパークラフト工房より専門家を招き、基本造型の体験を通じて紙工作の基本等を学んでいる「ペーパークラフト講座」で構成されています。
「橋コンテスト」と「橋講座」は、インフラ教育の優れた教材
「ボール紙で作る橋コンテスト」と「ボール紙で作る橋講座」は、小学生に「土木インフラの大切さを知ってもらう」ことを目的とした取り組みですが、学校を通じた取り組みの効果は高く、つくば市内で本コンテストについて尋ねると、ほぼ全ての児童・生徒より認知している声を聞くことができます。
そして、この取り組みを長年にわたりリードしてくれているのが国総研の一人の主任研究官。彼は、「つくば市科学技術マイスター」としても、つくば市内の科学教育活動に精力的に取組んでくれています。専門的な知識を多くの人にわかりやすく、楽しく伝え、子供たちをはじめとする一般市民の方々に科学やインフラに関する興味関心を育成してくれています。
こうした取り組みが、国土とインフラ分野の教育に大いに役立つものと期待しています。
国総研上空から筑波山を望む
国総研20年史
第28回(令和3年)ボール紙で作る橋コンテスト~表彰式の風景~
第27回(令和2年)ボール紙で作る橋コンテスト ~最優秀作品~
ボール紙で作る橋講座の様子(平成30年8月)
(今回の舞台)
(2021年11月21日)