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国土地理院/地図で学ぶ脆弱国土

★国土地理院(茨城県つくば市)は、日本国内の基本図である「地形図」の発行元。敷地内にある「地図と測量の科学館」では、わが国の国土条件や地図・測量の役割を誰もが楽しみながら体感できます。また、新たにスタートさせた「自然災害伝承碑」の取り組みは、防災教育での活用が期待されます。


 道路地図、住宅地図、都市計画図、鉄道路線図、バス路線図、観光案内図、天気予報図、植生図、ハザードマップ、グーグルマップなど、私たちは、沢山の地図に囲まれて暮らしています。地図は私たちの生活にかかせないものです。

 国土地理院は、国土交通省に設置された測量行政を行う機関で、日本国内の基本図である「地形図」の発行元として知られています。茨城県つくば市の敷地内には、地図や測量の役割を誰もが楽しみながら体感できる施設「地図と測量の科学館」が併設されており、地図や測量に関する歴史、原理や仕組み、新しい技術などが総合的に展示されています。


 国土地理院↓


 地図と測量の科学館↓


大陸目線で日本を俯瞰できる「日本列島球体模型」

 科学館屋外の「地球ひろば」には、高さ約2m、直径約22mの「日本列島球体模型」があり、陶板に焼き付けられた20万分の1地勢図が球体の表面を覆っています。この模型の上に立って見下ろす日本列島は、高度約300kmの人工衛星から見下ろした地表に相当するもので、東アジア地域におけるわが国の過去・現在・未来について、いろいろな気付きを与えてくれます。

 古代の日本は、朝鮮半島や中国から、水田稲作、土木技術(ため池造成など)、漢字、仏教などの進んだ文化を取り入れてきました。なるほど、朝鮮半島や中国から日本を見ると、海の向こう側に島国があって、その島国までの距離感は、この球体模型上からの目線で見えたのだと思います。古代の日本では、日本海側が外国とつながる玄関口でした。

 また、日本海は日本とユーラシア大陸に囲まれた大きな湖のようにも見えます。現在、日本海側の都市は、東アジアの都市と姉妹都市提携を結んでいますし、ロシアや韓国の都市と定期航路や定期便の飛行機で結ばれています。

 一方で、ロシアのウラジオストク港、韓国の釜山港や仁川港、中国の大連港・天津港・青島港・上海港・寧波港などの重要な港から、東南アジアや北アメリカに向けて太平洋に出るためには、必ず日本付近の海峡を通過しなければならないことがわかります。


脆弱国土が三次元体感できる「日本列島空中散歩マップ」

 屋内の1階ラウンジには、「日本列島空中散歩マップ」と呼ばれる巨大な日本地図があり、専用の赤青メガネ(3D眼鏡)で見ると、日本列島とその周辺海域の起伏が立体的に見えます。1mの高さから見た日本列島の眺めは迫力満点で、地球の上空100kmを空中散歩しているように見えますが、地上にある険しい山脈や狭い平野だけでなく、水面下にある海溝やトラフの起伏まで三次元体感できるのが特徴です。この地図を見ると、日本列島(東日本)が如何に深い海溝の近くに位置し、その海溝にいまにも飲み込まれそうな状況にあるかが、また南海トラフで地震が発生したら如何に短時間で大津波が到着してしまうのかが、自分の目で確認できます。日本の国土が如何に脆弱であるかが体感できるのです。

 このように、「地図と測量の科学館」にいると、なるほど、時代や社会を読み解く鍵は、国土や地理にあるのだと再認識させられます。これは、地図帳やパソコン画面で見ていてはわからない感覚です。


防災教育での活用が期待される「自然災害伝承碑」

 わが国は、その位置、地形、地質、気象などの自然的条件から、昔から数多くの自然災害に見舞われてきました。そして被害を受けるたびに、わたしたちの先人はそのときの様子や教訓を石碑やモニュメントに刻み、後世の私たちに遺してくれました。

 新たにスタートした国土地理院の取り組みは、「自然災害伝承碑」の地図記号をつくり、地理院地図に掲載することで、自然災害伝承碑を周知し、地域住民の方に地域ごとに発生しやすい自然災害を現実のものとして感じてもらうことを目的としたものです。自然災害伝承碑をきっかけとし、過去の教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減を目指しています。さらに、身近な災害履歴を学ぶための学習教材として、学校における防災教育等での活用が期待されています。

 先人たちが現代に伝える災害の教訓を正しく知ることが、災害への「備え」を充実させ、災害による被害の軽減に貢献するものとなると期待しています。


 自然災害伝承碑↓


 自然災害伝承碑の代表事例↓


 令和元年東日本台風から1年、久慈川・那珂川流域の自然災害伝承碑8基を公開↓


地球ひろばの全景と日本列島球体模型(地図と測量の科学館)


大陸から見た日本の姿(日本列島球体模型)


大陸から見た日本の姿(国土技術研究センターHPより)


日本列島空中散歩マップ(地図と測量の科学館)


地理院地図における「自然災害伝承碑」表示イメージ


(今回の舞台)


(2021年12月5日)

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