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伊勢湾台風の記憶<愛知の歴史災害①>

★愛知県内には、伊勢湾台風の様子や教訓を石碑やモニュメントに刻み、後世の私たちに遺してくれている地域(箇所)が沢山あります。過去の災害の教訓を正しく知ることが、災害への「備え」を充実させ、今後の被害軽減を導くことになります。


大規模自然災害頻発国「日本」

 地震、津波、火山噴火、洪水、土砂崩れなどの自然災害が頻発する国土の上で、私たち日本人は暮らしています。ここ10年間を振り返っただけでも、平成26年8月豪雨(広島市の大規模土砂災害)、平成26年の御嶽山噴火、平成27年9月関東・東北豪雨(鬼怒川の堤防決壊)、平成28年熊本地震、平成29年7月九州北部豪雨、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、平成30年北海道胆振東部地震、令和元年東日本台風(台風第19号)、令和2年7月豪雨(熊本豪雨)、令和3年熱海市伊豆山土石流災害など、大規模な自然災害が頻発していることがわかります。

 また、近年は、毎冬のように記録的な寒波が到来し、北海道・東北・北陸といった積雪寒冷地域だけでなく、首都圏や中部圏・近畿圏、さらには中国・四国・九州といった地域を含め、日本列島各地が記録的な大雪に見まわれ、交通の麻痺やライフラインの切断など、甚大な被害が発生しています。

 私たち日本人は、イギリス、フランス、ドイツといった国々とは大きく異なる、このきわめて厳しい条件を備えた国土に働きかけながら、安全で快適な生活環境を築いてきました。この脆弱な国土の上で、日本人は何度も何度も大きな自然災害に見舞われながらも、その都度、諦めることなく努力して、大規模自然災害からの復旧・復興を果たしてきました。


台風の進路にある日本

 自然災害の中で、このシーズン(8月~10月)のわが国において特に注意が必要なのが「台風」による被害。気象庁のホームページによると、過去「30年間(1991~2020年)の平均では、年間で約25個の台風が発生し、約12個の台風が日本から300 km以内に接近し、約3個が日本に上陸して」おり、「発生・接近・上陸ともに、7月から10月にかけて最も多く」なっています。また、偏西風の影響を受け、台風は「9月以降になると南海上から放物線を描くように日本付近を通るようになり」、さらに「このとき秋雨前線の活動を活発にして大雨を降らせる」こともあり、「室戸台風、伊勢湾台風など過去に日本に大きな災害をもたらした台風の多くは9月にこの経路をとって」いることがわかります。

 そして、台風によって引き起こされる災害は、風害、水害、高潮害、波浪害など多様であり、かつこれらは単独で発生するだけではなく、複合して発生し大きな被害となることも少なくありません。


 台風の発生、接近、上陸、経路|気象庁


伊勢湾台風と愛知県内の被害

 愛知県内で甚大な被害が発生した歴史災害(風水害)の事例として、真っ先に挙げることができるのは「伊勢湾台風」ではないでしょうか。

 伊勢湾台風とは、1959年(昭和34年)9月26日に潮岬に上陸し、紀伊半島から東海地方を中心にほぼ全国にわたって甚大な被害をもたらした台風15号(伊勢湾沿岸の愛知県と三重県での被害が特に甚大であったことからこの名称が付けられた)のことで、全国の死者・行方不明者の数は5,000人を超え、明治以降のわが国における台風の災害史上最悪の惨事となりました。

 とりわけ、紀伊半島沿岸一帯と伊勢湾沿岸では激しい暴風雨の下、高潮により短時間のうちに大規模な浸水が起こり、さらに強風や河川の氾濫により、愛知県では名古屋市などで、死者・行方不明者が3,200名以上に達する大きな被害となりました。


 伊勢湾台風とは?犠牲者5000人超「暴走木材」が街を襲った/災害リスク|NHK


 伊勢湾台風の記録資料-伊勢湾台風を知ろう-|名古屋市


 【名古屋市公式】伊勢湾台風の記録(昭和35年(1960年)制作・字幕付き)|名古屋市


 過去事例を引用した警戒の呼びかけ『伊勢湾台風』|名古屋地方気象台


 災害教訓の継承に関する専門調査会報告書 平成20年3月『1959伊勢湾台風』/防災情報のページ|内閣府


 夏休み特別シアター「日本の国土と災害を考える」(2012.8.22)|土木学会




愛知県内にある自然災害伝承碑

 愛知県内には、伊勢湾台風の様子や教訓を石碑やモニュメントに刻み、後世の私たちに遺してくれている地域(箇所)が沢山あります。その中には、国土地理院がつくった地図記号『自然災害伝承碑』に位置づけ、ウェブ地図「地理院地図」に掲載することで、過去の教訓を踏まえた的確な防災行動による被害の軽減を目指しているところもあります。

 先人たちが現代に伝える災害の教訓を正しく知ることが、災害への「備え」を充実させ、今後の被害軽減を導くのです。


 Map6(伊勢湾台風)/災とSeeing|名古屋大学減災連携研究センター


 伊勢湾台風(1959年9月26日)/自然災害伝承碑|国土地理院


 浜田南公園/見てみよう!歴史地震記録と 旬のあいちvol.51|名古屋大学減災連携研究センター


 北犬山公会堂/見てみよう!歴史地震記録と 旬のあいちvol.41|名古屋大学減災連携研究センター


 伊勢湾台風遭難者慰霊之碑/見てみよう!歴史地震記録と 旬のあいちvol.98|名古屋大学減災連携研究センター



伊勢湾台風殉難者慰霊之碑と浸水位標識(浜田南公園/名古屋市南区浜田町)

※伊勢湾台風の際に避難中の群衆に高潮が襲いかかり、多くの犠牲者を出した場所。公園の一角には、伊勢湾台風殉難者慰霊之碑が建立されているとともに、被災当時の学区内の最大水深(神松地区)を足下からの高さに置き換えて表示している浸水位標識も併設されている。


伊勢湾台風被災追憶之碑と遭難者慰霊地蔵尊(北犬山公会堂/東海市名和町)

※伊勢湾台風被災追憶之碑には、台風被害発生後に各地で総力を挙げて行われた救助・復旧作業への尽力に対する感謝の気持ちと、教訓を後世に語り継ぐ意志が込められている。また、碑と対面する位置には、遭難者への冥福の祈りが込められた遭難者慰霊地蔵尊が安置されている。


伊勢湾台風遭難者慰霊之碑(半田市瑞穂町)

※伊勢湾台風の高潮が海岸堤防を乗り越えて半田市を襲い、海岸地帯の約13.72平方キロメートルが冠水。各地の護岸堤防は損傷あるいは流失して死者292人、家屋全壊938戸、家屋流失511戸等の被害となった。


(今回の舞台)



(2023年10月01日)


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