陸の玄関口『熊本駅』周辺開発と九州新幹線の開業効果
★九州新幹線の全線開通は、移動時間の短縮や利用者数の増加だけでなく、駅周辺の開発やそれに伴う波及効果（定住人口、雇用の増加等）を含め、ここ熊本にも大きな影響を与えつつある。今回発表された熊本駅ビルや白川口（東口）駅前広場の開発との相乗効果が期待される。
JR九州と熊本市は（2017年）11月8日、2021年春の開業を目指す熊本駅ビルと白川口（東口）駅前広場の開発概要を発表した。JR九州によると、2018年春に豊肥本線・鹿児島本線下り線の鉄道高架化が完了した後、2019年春に熊本駅ビルの工事に着手し、2021年春の駅ビル開業を予定。陸の玄関口『熊本駅』に相応しい、地上12階、地下1階建ての駅ビルで、商業とホテル、立体駐車場による複合施設になるという。 また、駅周辺では熊本駅ビルの開発計画に合わせた「まちづくり」も推進され、2018年春には駅利用者らの利便性を向上させる高架下商業施設「えきマチ１丁目」が増床してリニューアルオープン予定。2019年春に北立体駐車場(500台収容)、2020年春に西立体駐車場(800台収容)が開業し、熊本駅ビル直結駐車場と合わせた開発計画全体での駐車場台数は計2,100台となる。今後は駅周辺での住居系開発も計画されているとのこと。 一方、熊本市が整備する新たな駅前広場は、高架化に伴い駅舎が後方に下がることで生み出される空間（現在の約1.7倍の18,000㎡に広がる）を有効活用して、公共交通機関（タクシー・バス）の乗降・待機場、独立した一般車降車・整理場、そして広いオープンスペースが設けられ、災害時の避難場所やボランティアセンターなど復旧・支援活動の拠点としても活用されることとなった。熊本地震の経験を踏まえ、駅周辺の防災機能が強化された形だ。駅前広場の整備は2019年度末の完成を目指している。
熊本駅ビルの開発概要について（JR九州）↓ http://www.jrkyushu.co.jp/news/__icsFiles/afieldfile/2017/11/07/171108kumamotostationbuilding.pdf
熊本駅白川口（東口）駅前広場整備事業について（熊本市）↓ http://www.city.kumamoto.jp/hpkiji/pub/detail.aspx?c_id=5&type=top&id=16798
こうした熊本駅周辺開発の背景にあるのが九州新幹線の全線開通。2011年3月の新幹線全通から6年半がたち、駅周辺の開発が活発化している。既に、熊本駅前に地上35階建てのタワーマンションが完成しており、駅南には九州財務局や熊本国税局などが入る合同庁舎も整備されている。昨年の熊本地震の影響で少し間が空いたが、今回、熊本駅ビルと白川口（東口）駅前広場の開発計画が明らかにされた。 博多まで新幹線で最速で「33分」という距離はまさに通勤圏内。新幹線全通後、博多～熊本間の利用者は増加傾向にあり、鉄道・運輸機構の資料によれば、在来線当時の博多～熊本間の輸送人員は1万7900人／日だったものが、開業4年目（2014年度）の新幹線利用者数でみると2万6300人／日へと大幅に伸びている。同様に、熊本～鹿児島中央間も8500人／日から1万3600人／日へと伸びた。熊本地震が発生した2016年度のデータで見ても、博多～熊本間の輸送人員が2万5657人／日、熊本～鹿児島中央間の輸送人員が1万1950人／日と、いずれも堅調に推移している。 さらに、九州新幹線開通の影響は九州内の移動だけにとどまらず、九州新幹線と山陽新幹線の相互乗り入れの効果もあって、熊本～山陽間、熊本～関西間といった広域的な公共交通機関流動量も大幅に増加している。観光面での効果も期待されている。
九州新幹線（博多・新八代間）の効果～事後評価の概要～（鉄道・運輸機構）↓ http://www.jrtt.go.jp/01organization/org/pdf/pam_jigohyouka_kyusyu.pdf
九州新幹線（博多・新八代間）事業に関する事後評価報告書（鉄道・運輸機構）↓ https://www.jrtt.go.jp/01Organization/org/pdf/jk27-06-2.pdf
路線別利用状況（JR九州）↓ http://www.jrkyushu.co.jp/company/info/data/rosenbetsu.html
新幹線の整備効果については、以下のような論考もあるが、新幹線開業による継続的な効果発現のためには、沿線地域の積極的な取り組みが不可欠だ。今回は、熊本駅周辺の開発計画を中心に紹介したが、新幹線停車駅は熊本駅だけではない。九州新幹線整備に伴い、県内には新玉名駅、新八代駅、新水俣駅も設置されているが、これらの地域では新幹線駅を上手く活かせているだろうか？
今ある資源をしっかり活かし、広域的にも地域間の連携を深めることが重要である。
【藤井聡】「新幹線」整備は、デフレ時代の超優良プロジェクトです。（「新」経世済民新聞）↓ https://38news.jp/economy/06968
（熊本駅新幹線口）
（N700系）
（800系）
（今回の舞台）
（2017年11月19日）
関連ページ（熊本国土学） ＜第94回＞地域を支え、観光客を誘致する「肥薩おれんじ鉄道」（2017/11/12）
