滝室坂を越える(豊後街道の難所/国道57号の隘路)
★人が行き来する豊後街道の石畳の滝室坂。車で往来する舗装道の滝室坂。H24九州北部豪雨後(応急復旧工事)の仮橋の滝室坂。洞門で越える現在の国道57号・滝室坂。そして、トンネルで滝室坂を越える新たなプロジェクトも始まっている。
「滝室坂」は、肥後熊本藩初代藩主・加藤清正公が軍事と交通の重要ルートとして整備し、細川氏が参勤交代で利用した「豊後街道」の最大の難所で、阿蘇谷の東端、一の宮町坂梨から東外輪山にいたる標高差約200m、距離にして約3キロメートルの急坂である。ふもとには旧宿場町の坂梨がある。 江戸時代後期の旅行家(地理学者)・古川古松軒の『西遊雑記』によると、「古人の方言に、大阪に坂なし、坂梨に坂有りとて、豊後より坂梨へ入るに片坂にて嶮(険)祖の下り坂一里半、豊後の西は肥後の国より小高き土地といふ」とあり、滝室坂は険しく容易に登ることができないものであった。 現在、豊後街道の滝室坂ルートは、H2年(1990年)の大水害で大きな被害を受け廃道となっている。また、滝室坂(坂梨側)入口付近の石畳も、H28年4月の熊本地震で被災した。
街道歩きの旅・豊後街道(波野~滝室坂~宮地)↓ http://kaidoaruki.com/area_kyusyu/bungo/bungo02.html
(阿蘇神社)
(坂梨宿場街道)
(滝室坂入口:熊本地震により全面通行止め)
(滝室坂案内板)
(滝室坂入口の石畳)
一方、旧道(豊後街道の滝室坂ルート)の北壁に沿って走る現在の国道57号は、九州を横断する重要な幹線道路として機能しているが、道路線形が悪く、勾配も急で、また冬季の積雪・凍結も大きな課題となっている。 さらに、国道57号(滝室坂地区)では、平成24年7月の九州北部豪雨により斜面崩壊等が発生し、40日間もの全面通行止めを余儀なくされた。仮橋での応急復旧、洞門(ロックシェッド)での本復旧を図ったものの、現在も、連続雨量140mmで事前通行規制を行なわなければならない区間となっている。
国道57号滝室坂の事前通行規制(熊本河川国道事務所HP)↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/bousai/takimuro_kisei01.html
国道57号路面状況(熊本河川国道事務所HP)↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/bousai/road_live/road_live02.html
(国道57号・滝室坂地区)
(国道57号・滝室坂洞門)
そして現在、こうした課題を解消するため、「国道57号滝室坂道路」の整備が始まっている。 国道57号滝室坂道路は、熊本市と大分市を結ぶ延長約120kmの地域高規格道路「中九州横断道路」の一部となる道路で、約4.8㎞の長大トンネルを含む完成2車線の自動車専用道路である。 国道57号滝室坂道路の整備により、線形不良箇所及び路面凍結の回避が可能となり、走行性向上及び交通安全性の向上が期待できるとともに、大規模災害発生時における救援ルートの多重化と広域化が図られることとなる。また、大分県と熊本県の沿線各都市間の所要時間短縮や高速定時性の確保が図られ、観光・交流促進、物流の効率化等に貢献することが期待されている。
中九州横断道路 滝室坂道路(熊本河川国道事務所HP)↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/kumamoto/road/juutai_taisaku/takimurozaka.html
中九州横断道路 滝室坂道路(九州地方整備局HP)↓ http://www.qsr.mlit.go.jp/s_top/jigyo-hyoka/161115/shiryou5_takimurozaka.pdf
(今回の舞台)
(2017年1月15日)