地震・津波災害に備える<『かがやく豊橋』⑤>
★南海トラフ地震・津波の発生に備えるため、リダンダンシーのある幹線道路ネットワークの整備を含め、総合的な防災・減災対策に取り組んでいく必要があります。
「11月5日」の津波防災訓練
11月5日は「津波防災の日」。豊橋市では毎年、この日にあわせて津波防災訓練を実施しています。今年度も2022年11月5日、伊古部町と小松原町の表浜海岸、三河湾に近い障害者支援施設「シーサイド吉前」の3カ所で、南海トラフ地震の発生を想定した津波防災訓練が実施されました。
当日は、総勢約350人が参加。伊古部海岸では、市消防本部、豊橋署、高豊校区自治会、ウミガメ保護や海岸保全に取り組むNPO法人「表浜ネットワーク」やサーファーらが訓練用緊急地震速報を合図に高台(野外教育センター)への避難訓練を開始。地震津波防災に関する講話や名古屋市防災航空隊のヘリコプターによる救助訓練も行われました。
サーファーらを素早く避難誘導 豊橋で津波防災訓練(2022年11月6日掲載)|中日新聞
「津波防災の日」に豊橋市が訓練(2022年11月6日掲載)|東愛知新聞
津波防災訓練が行われた表浜海岸(小松原海岸)
表浜海岸と歴史的地震津波の記憶
表浜海岸(愛知県の南端、渥美半島の遠州灘に面した直線的な海岸)は、海食崖と良好な砂浜が続く全長約47キロメートルにわたる美しい海岸で、週末を中心に多くのサーファーや釣り人で賑わいを見せるとともに、絶滅危惧種のアカウミガメが産卵することでも知られています。
また、伊古部海岸(伊古部町の表浜海岸)には、NHK連続テレビ小説「エール」のロケ地になったことを記念した白いエールオブジェが設置されていて、地域の観光資源の一つになっています。
おすすめスポット/表浜海岸/エールのまち豊橋|豊橋市
エールオブジェ|豊橋市
表浜海岸(伊古部海岸)
表浜海岸(東赤沢海岸)
この表浜海岸(伊古部西海岸、ささゆりの里)には、『震災、鎮めの石碑』が建立されており、案内板には、「この石碑は、安政6年に網元の仙太郎さんが震災が二度と起きないことを願って建てました。」、「「安政元年(1854年)11月4日午前9時頃と、5日午前5時頃続けて2度にわたり起きたマグニチュード8.4と言われる大震災により伊古部村の大羽根山が800メートル海中へ押し出され一つの島となった。漁労に使う舟、網とも高波に残らず引かれた。家屋の倒壊、流出甚大なり」と古文書に記されている。」、「この地震は「大津波をともなっており、言い伝えでは推定29mの高台まで海水が上がった」とのことである。」と記されています。
ささゆりの里(さと)(震災鎮めの石碑)|歴史地震記録に学ぶ 防災・減災サイト
伊古部西海岸(ささゆりの里)にある『震災、鎮めの石碑』
社会科副読本『かがやく豊橋』で学ぶ、地震への備え
豊橋市教育委員会が作成した小学校3・4年生向けの社会科副読本『かがやく豊橋』では、「地震への備え」について、以下の学びの機会が提供されています。(第4章第3節「4.安全なまち豊橋(3)さい害にそなえる」掲載)
社会科副読本『かがやく豊橋』(豊橋市教育委員会)の学習コンテンツ
豊橋市防災ガイドブック|豊橋市
防災・災害情報|豊橋市
防災危機管理課|豊橋市
南海トラフ地震・津波に備える
豊橋市では、南海トラフで発生する地震・津波を想定した「豊橋市南海トラフ地震被害予測調査」を実施し、調査結果を2014年(平成26年)8月28日に公表しています。南海トラフで発生する地震は多様性があり、予測困難ではありますが、効果的な防災・減災対策の実施につなげていくため、過去に実際に発生した地震を参考とする「過去地震最大モデル」と、あらゆる可能性を考慮して最大クラスの地震を想定した「理論上最大想定モデル」の2つのモデルケースによる被害予測調査を実施しています。
さらに、災害対策基本法に基づく「豊橋市地域防災計画(地震・津波災害対策計画)」を策定するとともに、地域内の関係機関と連携しながら、様々な防災・減災対策に取り組んでいます。
①地域防災力の強化(防災啓発、自主防災組織強化)
・校区、町、小中学校、団体等での防災訓練や防災講話
・地域の防災リーダーの養成とフォローアップ
・自主防災組織強化のための資機材・備蓄品の整備
②住民啓発
・防災ガイドブック(ハザードマップを含む)の作成・配布
・避難所誘導標識の整備
・標高看板の整備(浸水想定区域周辺)
③情報伝達体制の強化(複線化)
・同報系防災行政無線
・MCA無線(避難所、防災拠点、消防団等)
・豊橋ほっとメール
・防災アプリ「ハザードン」
・豊橋防災ラジオ〈FMとよはし〉
④避難所及び防災活動拠点の整備
・第一指定避難所(市民館等)、第二指定避難所(小中学校等)、福祉避難所
・津波防災センター、津波避難ビル
・帰宅困難者支援施設
・防災活動拠点(総合スポーツ公園等)
⑤防災施設・設備の強化
・防災備蓄倉庫
・飲料水兼耐震性貯水槽
⑥各種防災計画作成、広域連携等協定締結
⑦総合防災訓練、災害対策本部設置運営訓練の実施
南海トラフ地震被害予測調査|豊橋市
豊橋市地域防災計画/豊橋市水防計画|豊橋市
豊橋市の取り組み/防災ガイドブック|豊橋市
熊本地震の経験から学ぶ(リダンダンシーのある幹線道路ネットワークの必要性)
平成28年4月14日21時26分、熊本地方を震央とするマグニチュード6.5の地震が発生(前震)。さらに、その28時間後の4月16日1時25分にはマグニチュード7.3の地震が発生し、益城町と西原村で最大震度7を観測しました(本震)。
延べ4,000回を超える余震による影響を含め、「熊本地震」は熊本〜阿蘇周辺地域に甚大な被害を与えました。多数の家屋倒壊や土砂災害による人的被害、電気・ガス・水道などのライフラインへの被害のほか、空港・道路・鉄道などの交通インフラにも甚大な被害が生じ、県民生活や中小企業、農林漁業や観光業などの経済活動にも大きな支障が生じました。
主要幹線道路では、南北方向の大動脈である九州縦貫自動車道が4月14日の前震段階から甚大な被害を受け、被災後2週間にわたり全面通行止めとなりました。その後も片側1車線での交通規制が続き、全線4車線で完全復旧できたのは地震発生から1年後(平成29年4月28日)となりました。
また、4月16日の本震では、東西方向の生命線ともいうべき国道57号が南阿蘇村立野地点で斜面崩壊により寸断、これと接続する国道325号阿蘇大橋も崩落、さらに県道28号熊本高森線の俵山トンネルとそれにつながる橋梁群も損傷し、2〜3万台/日を超える熊本〜阿蘇間の重交通が機能麻痺の状態となりました。これに対しては、広域の迂回路(国道443号、ミルクロード、グリーンロード)の啓開を急ぎ、いずれも数日で通行可能としましたが、その後、これらの幹線道路(国道57号、325号)の本復旧には5年弱の時間を必要としました。
熊本地震では、リダンダンシー(redundancy)のある幹線道路ネットワークの必要性を痛感させられました。特に、熊本〜大分を結ぶ東西幹線軸は国道57号1本しかなく、有事の際には大きなリスクになることを改めて認識させられました。
また、南北軸では九州縦貫道がストップしたため、国道3号が大渋滞を引き起こし、機能麻痺の状態となりました。今回のように主要幹線道路が大きな損壊を受けると、人、モノの流れがストップし、経済社会的に大きなダメージを与えることになってしまう。「1本の幹線道路が通行不能になっても代替、迂回できる幹線道路が別にある」、今回の熊本地震は、そういう重層的な交通ネットワークの価値を改めて教えたのだと思います。
マネジメントの視点からみた、平成28年熊本地震からの復旧・復興|建設マネジメント技術(2017年5月号)
ここ豊橋でも、現在、一般国道23号名豊道路、豊橋新城スマートIC(仮称)、浜松湖西豊橋道路といった幹線道路の整備や計画策定が進められていますが、道路ネットワークの多重化、リダンダンシー確保の観点からも、その早期整備が求められています。
国道23号名豊道路|名四国道事務所
豊橋新城スマートインターチェンジ (仮称)|豊橋市
浜松湖西豊橋道路|名四国道事務所
(今回の舞台)
(2023年01月29日)