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令和5年6月台風2号豪雨災害<穂の国「東三河」⑰>

★7月20日、東海地方でようやく梅雨が明けましたが、令和5年6月台風2号豪雨災害はこの地に大きな被害を与えました。


日本列島と梅雨

 多雨地帯であるモンスーンアジアの東端に位置する日本。わが国の降水量は季節ごとの変動が激しく、梅雨期と台風期に集中しています。なかでも、梅雨期の降雨の特徴は、東西数千kmに渡ってできる梅雨前線が停滞と北上を続けながら各地に長雨をもたらすというもので、さらに近年では気候変動の影響もあって、線状降水帯(積乱雲が線状に次々に発生して、ほぼ同じ場所を通過・停滞する自然現象。極端な集中豪雨をもたらし、災害発生リスクが大きい)が各地で発生するなど、典型的な梅雨型豪雨はこれまでより頻繁に、より強力に発生することが危惧されています。


梅雨型豪雨の経験

 社会人になって早35年。赴任地で大規模な梅雨型豪雨災害を経験したこともありました。以下のケースでは、いずれも自然の猛威を実感するとともに、職務上、肝を冷やしたこともありました。

<6.29豪雨災害>

 1999年(平成11年)6月29日に発生した水害(典型的な都市型水害)で、当時勤務していた福岡市内は局地的な豪雨に見舞われ、外水氾濫と内水氾濫が同時に起こったことにより、JR博多駅周辺の地下鉄博多駅や博多駅地下街、天神地下街をはじめ周辺のビル地下が軒並み浸水しました。交通麻痺や停電が都市機能を停止に陥れ、博多駅近くのビル地下では亡くなられた方もいらっしゃいました。

 当時、博多駅近くにあった職場(九州地方建設局)に出勤するにあたり、膝下まで水位が上がっていた水浸しの道路(と思われる場所)を、チャプチャプと音をたてながら歩いたことを記憶しています。


<平成16年7月新潟・福島豪雨>

 2004年(平成16年)7月13日を中心に新潟県中越地方や福島県会津地方で発生した豪雨災害で、とりわけ新潟県側では、河川堤防が数多く決壊した信濃川水系の五十嵐川流域や刈谷田川流域を中心に、甚大な被害が発生しました。

 当時、私は郡山国道事務所(東北地方整備局。福島県の郡山・白河・会津地方にある直轄国道を管理している)に勤務し、一般国道49号の福島・新潟県境部の通行規制や被災箇所の復旧などの指揮を執っていましたので、梅雨前線が移動して交通解放できるようになるまでの様々な対応に、神経をすり減らしていたことを今でも鮮明に覚えています。


 郡山国道事務所ホームページ


<平成28年梅雨前線豪雨>

 2016年(平成28年)6月19日から6月30日にかけて西日本を中心に発生した豪雨災害のことで、とりわけ熊本県内では、同年4月の熊本地震で被災した直後で地盤が緩んでいたこともあって土砂災害が多発し、甚大な被害となりました。この時観測された最大1時間降水量は、熊本県甲佐町甲佐で150.0ミリ(全国の観測地点で史上4位)を記録しました。

 当時、私は熊本河川国道事務所(九州地方整備局。熊本県内の直轄国道及び一級河川白川・緑川を管理している)に勤務し、熊本地震災害復旧工事の陣頭指揮を執っていましたので、事務所災害対策室に映された管内の河川・道路のライブカメラ画像等を見ながら、まさに肝を冷やしていたのでありました。



 熊本河川国道事務所ホームページ


一級河川・豊川の水害履歴と梅雨

 東三河を流れる一級河川・豊川の流域は、歴史的に度々洪水に見舞われてきました。1959年(昭和34年)の台風15号(伊勢湾台風)による甚大な被害はもとより、1965年(昭和40年)に豊川放水路が完成した後も、1968年(昭和43年)の台風10号、1969年(昭和44年)の台風7号、1974年(昭和49年)の台風8号、1979年(昭和54年)の台風20号、1982年(昭和57年)の台風9号、1991年(平成3年)の台風18号、1994年(平成6年)の台風26号、2000年(平成12年)の台風14号、2003年(平成15年)の台風15号、2004年(平成16年)の台風6号・台風23号、2011年(平成23年)の台風15号など、豊川左岸の4つの霞堤地区(牛川、下条、賀茂、金沢)では浸水被害が生じています。

 上記の水害履歴をみると、いずれも台風に起因するものばかりですが、梅雨前線による水害がこれまでに全く無かった訳ではありません。1937年(昭和12年)7月の梅雨前線による集中豪雨では、豊橋市大村・豊川市小坂井地内は一面の泥海となり、大きな被害が発生しました。これが豊川放水路着工(昭和13年)の大きな切っ掛けになったと記録されています。


 豊川の主な災害/豊川/中部の一級河川/日本の川|国土交通省


 難航した放水路計画、27年間の長期工事|豊川放水路完成50周年記念シンポジウム


豊川放水路分流堰(豊川市行明町)

※豊川放水路は、豊川の洪水被害を軽減するために戦後に建設された、我が国を代表する放水路の一つとして、「推奨土木遺産(公益社団法人・土木学会)」に認定されています。https://committees.jsce.or.jp/heritage/node/1213


令和5年6月台風2号豪雨災害

 今年(2023年)6月2日から3日にかけて東海3県を襲った記録的な豪雨では、東三河地域で2度の線状降水帯が発生、4箇所の霞堤地区(金沢、賀茂、下条、牛川)をはじめ豊川流域は内水・外水で広範囲に浸水し、大きな被害を受けました。

 豊橋市域を含めて、流域内の人命と財産を洪水の危険から守るためには、引き続き豊川の改修事業や上流に洪水調節等の目的を持つ設楽ダムの建設を進めるとともに、これらのハード対策と合わせて、被害の軽減、早期復旧・復興に資するソフト対策を進めていくことが重要です。



 豊川流域治水プロジェクト取組状況(令和5年2月22日)|豊橋河川事務所



(今回の舞台)



(2023年08月06日)

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