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三遠南信地域の連携と道路インフラ<『かがやく豊橋』⑫>

★三遠南信(愛知県東「三」河、静岡県「遠」州、長野県「南信」州)地域では、三遠南信自動車道の整備を切っ掛けとして、産業、文化、防災など幅広い分野の連携が進められています。


三遠南信自動車道の建設

 三遠南信自動車道は、長野県飯田市の中央自動車道(飯田山本IC)を起点とし、愛知県東部を経由して、静岡県浜松市北区引佐町の新東名高速道路(浜松いなさJCT)に至る延長約100kmの高規格幹線道路であり、一般国道自動車専用道路(国道474号)として整備が進められています。

 また、三遠南信自動車道を整備することで、新東名自動車道と中央自動車道を相互に連絡する高規格幹線道路網が形成されることとなり、①三遠南信地域への高速サービスの提供、②災害に強い道路網の構築、③地域医療サービス向上への支援、④三遠南信地域の交流促進・連携強化による地域の活性化の支援、といった様々な整備効果が期待されています。

 2022年末(令和4年12月末)現在の整備状況は、起点側(長野県側)については、飯喬道路(飯田山本IC~飯田上久堅・喬木富田IC間14.6km)と小川路峠道路(喬木村矢筈から飯田市上村程野までの矢筈トンネル区間4.8km)が、終点側(静岡県側)については、佐久間道路・三遠道路(佐久間川合IC~東栄IC間6,9km、鳳来峡IC~浜松いなさJCT間13.9km)が開通済みとなっています(合計4区間、約40kmが開通済み)。

 また、飯喬道路(飯田上久堅・喬木富田IC~喬木I.C間7.5km)、青崩峠道路(青崩峠トンネルを含む5.9km)、三遠道路(東栄IC~鳳来峡IC間7.1km)では、トンネル・橋梁・土工などの工事が全面展開されており、このうち東栄IC~鳳来峡IC間については2025年度の開通が予定されています。

 青崩峠道路は、一般国道152号の長野・静岡県境の通行不能区間を、青崩峠トンネル(4,998m)等によって迂回する道路ですが、この区間(青崩峠)は大規模断層帯の中央構造線が通り、もろく崩れやすい泥岩が多い地質で、崖崩れが発生しやすいなど、青崩峠トンネルの掘削は三遠南信自動車道全体の中で最難関な工事となっています。しかし、様々な技術的課題を克服しながら工事が進められた結果、現在のトンネル掘進状況(進捗率)は95%を越えており、早期の完成が期待されています。

 なお、国土交通省が事業を進めている区間(工事を実施している上記3区間と、用地買収に向け交渉を続けている水窪佐久間道路)以外については、なるべく短期間で三遠南信自動車道全体の整備・開通効果を上げるとの方針から、「現道活用区間」として位置づけられており、並行する一般国道152号を管理する長野県と浜松市において必要に応じた整備がなされています(長野県側では、向井万場拡幅・小道木バイパス・和田バイパス・小嵐バイパスといった道路改良事業が実施され、9割以上の区間が整備済みとなっています)。


 三遠南信自動車道|飯田国道事務所


 三遠南信自動車道|浜松河川国道事務所


 国道152号三遠南信道現道活用区間の工事進捗状況(令和元年12月現在)|長野県下伊那南部建設事務所




三遠道路(東栄IC付近)の工事実施状況(2023.02)


三遠南信自動車道(東栄IC付近)の案内板


三遠道路(鳳来峡IC付近)の工事実施状況(2023.02)


三遠南信地域連携ビジョンと推進会議(SENA)

 三遠南信地域は、愛知県東「三」河、静岡県「遠」州、長野県「南信」州という県境にまたがる3つの地域で構成され、面積や人口の規模から見ても一つの県に匹敵する地域です。また、歴史的にも、天竜川の水運、塩の道、秋葉街道、東海道等を通じて、人や物資が往来し、活発な文化交流がなされ、お互いの地域発展や生活・文化の向上に影響を及ぼし合ってきました。

 こうした中、三遠南信自動車道の建設を切っ掛けとして、三遠南信地域の発展の方向性を明確に示すとともに、県境を越えた連携により、圏域を一体とした自立性の高い地域をつくりあげるため、地域住民をはじめ、大学、経済界、行政など、圏域の発展を願う関係者により、2008年(平成20年)に「(第1次)三遠南信地域連携ビジョン」が策定されています。

 また、第1次三遠南信地域連携ビジョンのテーマである「三遠南信250万流域都市圏の創造」のため、同年11月に「三遠南信地域連携ビジョン推進会議」(SENA)が設立されました。SENAは、東三河地域(8市町村、14商工会議所・商工会)、遠州地域(9市町、16商工会議所・商工会)、南信州地域(22市町村、23商工会議所・商工会)、愛知県、静岡県、長野県を構成団体として、民間団体等と連携しながら、地域間交流の促進、圏域の一体的な発展に向けて取組みを進めています。

 なお、2019年3月に策定された現行の第2次三遠南信地域連携ビジョンのテーマは「三遠南信流域都市圏の創生」で、2019年度(平成31年度)から2030年度までの12年間を計画期間、以下の「地域連携の方針」と「重点プロジェクト」を骨格として、様々な取り組みが進められています。

 <地域連携の方針>

  基本方針1:中部圏の中核的都市圏となる地域基盤の形成

 基本方針2:革新を取り込む産業創造圏の形成

 基本方針3:流域文化創造圏の形成

 基本方針4:安全安心な広域生活圏の形成

 基本方針5:地域の持続的発展に向けた人材集積地の形成

 <重点プロジェクト>

1.三遠南信交通ネットワーク形成プロジェクト

   (1) 交通ネットワークの主軸となる主要道路の整備促進や効果的な利用方法の検討

     (三遠南信自動車道、ダブルネットワークとなる国道151号など)

   (2) リニア中央新幹線と既存交通網との効果的な接続の推進

   (3) 三遠地域を牽引する道路網の整備の促進

     (浜松三ヶ日・豊橋道路(浜松湖西豊橋道路)を中心とした豊橋・浜松環状道路)

   (4) 三河港・御前崎港の整備・利用促進

   (5) リニア中央新幹線開業後の東海道新幹線の利用促進

  2.三遠南信圏民の一体感醸成プロジェクト

  3.地域の稼ぐ力強化プロジェクト

  4.三遠南信探訪プロジェクト

  5.中山間地域が輝くプロジェクト

  6.住むなら三遠南信プロジェクト

  7.人生100年時代プロジェクト


 三遠南信地域連携ビジョン推進会議 SENA


 第2次三遠南信地域連携ビジョン|三遠南信地域連携ビジョン推進会議 SENA


第30回三遠南信サミット2022 in 南信州

 2022年(令和4年)10月24日、飯田文化会館(長野県飯田市)を主会場に、SENA主催の「第30回三遠南信サミット2022 in 南信州」が開催されました。三遠南信サミットは1993年度(平成5年度)から毎年開催されており、第30回の記念サミットとなる今回は「新たな時代に向けて~大変革時における地域のリデザイン~」をテーマに、全体会や分科会などを通じて意見交換が行われ、三遠南信道など高速交通網の早期実現、三遠南信地域一体によるDXの推進、歴史資源の再ブランド化を進めるサミット宣言が採択されました。

 ○第一分科会:「DX時代の交流・連携 ~ヒト・モノ・コトの行き交う社会の創出~」

 ○第二分科会:「三遠南信地域をつなぐ道 ~これまでを辿り、これからへ繋ぐ~」

 ○第三分科会:「どうする三遠南信 ~歴史資源のリブランディング~」


 三遠南信サミット|三遠南信地域連携ビジョン推進会議 SENA


 第30回三遠南信サミット2022 in 南信州 特設サイト|三遠南信地域連携ビジョン推進会議 SENA


 第30回三遠南信サミット2022 in 南信州 サミット宣言|三遠南信地域連携ビジョン推進会議 SENA


 【飯田市】三遠南信サミット、3項目の宣言を採択「リニア効果生かし一層の連携強化を」|南信州新聞(2022年10月25日)


 新たな時代の連携在り方は 三遠南信サミット|長野日報(2022年10月25日)


 飯田市で「三遠南信サミット」DX推進や歴史資源活用、交通網整備など協議|東日新聞(2022年10月26日)



第30回三遠南信サミット2022 in 南信州


社会科副読本『かがやく豊橋』で学ぶ、三遠南信地域の連携と道路インフラ

 豊橋市教育委員会が作成した小学校3・4年生向けの社会科副読本『かがやく豊橋』は、三遠南信自動車道の建設を切っ掛けとして進む三遠南信地域の連携について、次のように説明しています(第7章第3節「7.わたしたちの愛知県(3)地いき連けい」に掲載)。



社会科副読本『かがやく豊橋』(豊橋市教育委員会)の学習コンテンツ


 これほどまでに広いエリアを対象とした「県境を越えた地域連携」の例は全国的にも珍しいのではないでしょうか。三遠南信(愛知県東「三」河、静岡県「遠」州、長野県「南信」州)地域では、三遠南信自動車道の整備を切っ掛けとして、産業、文化、防災など幅広い分野の連携が進められています。


(今回の舞台)



(2023年03月19日)







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