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水はどこから<『かがやく豊橋』⑥>

★「水道」インフラが整備され、飲料水(上水)が安全で安定的に供給されているお陰で、市民の健康や豊かな生活環境が実現しています。


水はどこからどこへ

 私たちは日常生活の中で、飲み水や炊事、洗濯、入浴、水洗トイレ、家庭菜園などのほか、飲食店や商業施設、オフィスなどで、たくさんの水を使っています。また、農業、工業、水力発電など、水は幅広い分野の産業で使われており、私たちの暮らしを支えています。

 この水は、もともと雨や雪の姿をして空から降ってきたものです。地上に降った雨(雪)水は、河川や地下水となって海に流れつき、太陽に暖められて蒸発し、雲を作り、雲はまた雨や雪になって地上に降ってきます。このことを「水の循環」といいます。

 この「水の循環」の中で、河川や地下から水を汲み上げ、浄水場で水をきれいにして家庭や工場に水を配っているのが「水道事業」、使用後の排水を下水処理場で再びきれいにして川や海に戻しているのが「下水道事業」です。


 飲み水はどこから?使った水はどこへ?暮らしを支える「水の循環」|政府広報オンライン


小学4年生が教科書で学ぶ「水道事業」

 小学校で「社会科」がスタートするのは第3学年(小学3年生)から。学習指導要領・同解説によると、第3学年では「市」を中心とする地域社会に関する内容を、第4学年では「県」を中心とする地域社会に関する内容を、第5学年では「日本」の国土と産業に関する内容を、第6学年では「日本」の政治と歴史、国際理解に関する内容を、それぞれ学ぶことになっています。

 今回のテーマである「水道事業」は、第4学年の学習単元「人々の健康や生活環境を支える事業」の中で、「飲料水・電気・ガスを供給する事業が安全で安定的に供給され、地域の人々の健康な生活の維持と向上に役立っている」ことを学ぶ、「供給事業として飲料水・電気・ガスの中からいずれか1つを選択して学習する」とされていますが、現在発行されている3つの検定教科書(東京書籍・教育出版・日本文教出版)ともに、「飲料水」をメインターゲットとして取り上げています。

 また、飲料水の供給(上水道事業)に関する教科書記述を見ると、いずれの教科書も、生活単位や地域単位の水の需給量を調べるところからスタートして、供給の仕組みや経路(水源林の確保、ダムや貯水池、浄水場での高度技術処理や水質検査、水道管など)を調べるとともに、各種施設や事業所などの建設に関わる県内外の人々、節水などに関わる県内の人々の連携や協力について調べることを通して、飲料水(上水)が安全で安定的に供給され、地域の人々の健康な生活の維持と向上に役立っていることを学習する内容になっています。


 小学4年・社会科で学ぶ「水インフラ」「防災」「先人の働き」(建設マネジメント技術2022.7)


社会科副読本『かがやく豊橋』で学ぶ、水はどこから(上水道)

 豊橋市教育委員会が作成した小学校3・4年生向けの社会科副読本『かがやく豊橋』では、豊橋市内の水道水の使われ方、水の使用量の変化、水道水供給の仕組みや経路、県事業との連携、渇水や災害への備えなど、豊橋の水道事業に関する詳細な学びの機会が提供されています(第5章第1節「5.住みよいまち豊橋(1)水はどこから(上水道)」に10ページを割いて掲載)。



社会科副読本『かがやく豊橋』(豊橋市教育委員会)の学習コンテンツ


豊橋市内の主な水道施設

豊橋市内には、水道事業者である市上下水道局が所管する2箇所の浄水場(小鷹野浄水場、高山浄水場)、1箇所の取水場(下条取水場)、5箇所の配水場(多米配水場、高山配水場、南部配水場、北部配水場、東部配水場)、9箇所の給水所(南栄給水所、下条給水所、下地給水所ほか)、高台へ水を送るための加圧所、常時水質・水圧などを監視する水質計測所、標高10mごとの水圧を制御する圧力制御所、これらの施設と水道利用者(各家庭など)とを繋いでいる配水管(水道管路)などの水道施設があります。

 また、市の水道施設以外にも、水道用水供給事業者である愛知県が所管する2か所の浄水場(愛知県豊橋浄水場、愛知県豊橋南部浄水場)や取水・配水施設が重要な役割を果たしており、これらが一体となって豊橋市内の水道供給を支えています。

 なお、豊橋市内の水道供給は、現在、小鷹野浄水場にある遠方監視システムによって24時間体制で集中管理されており、老朽化した水道管路の更新や大規模地震への備え(多米・高山・南部の3つの配水池のループ化や飲料水兼用耐震性貯水槽の整備など)といった今日的課題への対応も進められています。


【浄水場、取水場、配水場】

(1)「小鷹野浄水場←下条取水場」系統

 一級河川・豊川の伏流水を下条取水場で取水して小鷹野浄水場に導水し、小鷹野浄水場で緩速ろ過処理・消毒した後、高山配水場から各家庭へ配水している系統です。下条取水場では伏流水(豊川の川底から5.6m低い位置から汲み上げた水)を取水することで、大雨で豊川の水が濁った時でも良好な水質の水を取水することが出来ます。このことが、全国的に見ても稀な緩速ろ過処理(ろ過池の砂層に水を通し、生物ろ過膜の浄化作用で水をきれいにする方法)を可能としている理由でもあります。

 この系統(小鷹野浄水場←下条取水場)で取水・浄水している水(豊橋市の水)は、市内水道水の約1/6を賄っており、災害備蓄用飲料水「とよっすい」(アルミ缶、賞味期限:製造から5年)としても販売しています。

 なお、配水場は、高台にある配水池というタンクに大量の水道水を貯留し、自然流下方式で水道利用者(各家庭など)に配水するための施設です。

(2)「愛知県豊橋浄水場」系統

 一級河川・豊川を水源とする牟呂用水(森岡取水場)と豊川用水(三ツ口池)から取水して愛知県豊橋浄水場に導水し、豊橋浄水場で凝集沈殿処理・急速ろ過処理・消毒した後、多米配水場または北部配水場(愛知県権現調整池経由)から市の中心部・北部に配水している系統です。

(3)「愛知県豊橋南部浄水場」系統

 一級河川・豊川を水源とする豊川用水(水道水は万場調整池)から取水して愛知県豊橋南部浄水場に導水し、豊橋南部浄水場で凝集沈殿処理・急速ろ過処理・消毒した後、南部配水場または東部配水場(愛知県城下広域調整池経由)から市の南部に配水している系統です。

(4)「高山浄水場」系統

 弓張山脈の一部である高山浄水場東側の山の表流水を貯水池に貯めて、高山浄水場で緩速ろ過処理・消毒した後、高山配水場から各家庭へ配水している系統です。


【給水所】

(5)給水所系統(地下水)

 井戸から汲み上げた地下水を浄水処理・消毒した後、あるいは消毒だけを行った後、各家庭へ配水している施設です。市内には9箇所(下条、南栄、下地、池上、老津、細谷、大岩、豊清、伊古部)の給水所があります。


 現在、豊橋市内の上水の約7割は愛知県営水道((2)「愛知県豊橋浄水場」系統または(3)「愛知県豊橋南部浄水場」系統)からの供給であり、残る約3割が豊橋市独自の水源((1)「小鷹野浄水場←下条取水場」系統、(4)「高山浄水場」系統、または(5)給水所系統(地下水))からの供給となっています。


 水道のご紹介|豊橋市上下水道局


 東三河水道事務所|愛知県


 ピカピカの水/わたしたちのくらしと水道・下水道/令和4年5月発行|豊橋市上下水道局


 水をつくり届ける/新聞掲載記事|豊橋市上下水道局


 「とよっすい」|豊橋市上下水道局



「とよっすい」と「あいちの水」


デザイン水道栓ふた


小鷹野浄水場


下条取水場


豊川(豊橋市役所展望ロービーから上流を望む)


豊橋の水道の歴史

日本の近代水道は、1887年(明治20年)に通水した横浜市の水道に始まります。これは、江戸末期から明治初期にかけて外国との貿易が活発化した反面、大流行することになったコレラ・チフスなどの伝染病に対処するために整備されたものです。

 一方、豊橋では、1912年(明治45年)に陸軍がきれいな水を必要としたため、飯村町字高山の山から旧高師村(現在の富本町のあたり)兵舎まで専用の水道を引いたのがはじまりで、約1万人の兵士と馬の飲み水に使われたようです。

 一般市民への水道水の供給は、もう少し時間が経ってから。豊橋市では、1906年(明治39年)の市制発足以降、交通の要衝としての優れた地理的条件も手伝って、陸軍第15師団の誘致、繊糸工業の発達、さらに第一次世界大戦の好況等を背景として人口が年々増加を続けました。大戦が終わった1919年(大正8年)の人口は6万7千人弱となり、市政発足時の倍近くにまで増えていたようです。しかし、その一方で飲料水として井戸水を使用していたため、水質の悪化や水の枯渇をまねき、赤痢・腸チフス等の伝染病による死亡率は、大阪・名古屋・東京などの上下水道の完備している都市に比べて高い状況になっていました。

 こうした中、1927年(昭和2年)に豊橋市の一般用水道は着工し、2年9か月に及ぶ大規模な工事を経て、1930年(昭和5年)から市域への給水が開始されました(豊川の河床伏流水を水源として、浄水場と給水所は多米に設置され、16万人の給水能力を持つものでした)。

 なお、現在、豊橋市内の上水の約7割は愛知県営水道から供給を受けていますが、県営浄水場(豊橋浄水場、豊橋南部浄水場)が整備・運営されるのは、市勢の発展に伴う水需要が増加した昭和40年代以降になります。


 水道の歴史|豊橋市上下水道局


 歴史を学ぼう/こどもの部屋|豊橋市上下水道局


森林とダムの役割

 わが国の国土面積の約7割を占める山地・丘陵地は、国土の砂漠化に悩む国々とは異なり、大変有り難いことに緑で覆われています。そして、その山々のほとんどは日本人がつくり上げてきた緑であって、全く手付かずの森林は白神山地(青森)や春日山原始林(奈良)ぐらいしかありません。日本の森林の姿は、日本人の国土への働きかけの歴史(成果)をあらわしています。

 森林は、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止、木材をはじめとする林産物の供給等の多面的機能を有しており、国民生活及び国民経済に大きく貢献しています。このような機能を持続的に発揮しつつ、林業の成長産業化を実現していくためには、植栽、保育、間伐等の森林整備を適切に行うことによって、健全な森林を造成し、資源の循環利用を進めていく必要があります。

 一方、ダムには、1)洪水調節機能、2)河川維持流量の供給(舟運、漁業、地下水の維持等を正常に維持するための流量)、3)利水補給(上水、農業用水、工業用水等)、4)発電、などの機能があり、その用途に応じてダムの建設・運用がなされています。また、ダムに水を貯えておくことによって、長期間雨が降らないときの渇水被害の発生を防いでいます。わが国では、毎年のように各地で渇水が起きていますが、上流にダムを建設することによって、渇水の回数を減らすことができます。

 森林保全とダム開発。持続可能な水源を確保していくための継続的な取り組みが求められています。


(今回の舞台)



(2023年02月5日)

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